封建主義者の貨幣観

封建主義者の貨幣観

去る16日、『骨太の方針2023』が閣議決定されました。

原文を読んでみますと、懸念されるところの「プライマリー・バランス黒字化目標」についての言及が見当たりませんでした。

しかしながら、「財政健全化の旗を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む」という一文があります。

つまり「財政健全化目標…」という言葉を使っていることから、これをもって「プライマリー・バランス黒字化目標の旗は降ろさない…」と言っているのでしょう。

因みに、方針には「必要な政策対応と財政健全化目標に取り組むことは決して矛盾するものではない…」とありますが、財政健全化が財政収支の縮小均衡を意味している以上、明らかに矛盾します。

なお、今回の骨太の方針には「加速する新しい資本主義、未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現」というタイトルがつけられており、少子化対策も目玉として据えられています。

その財源については「今後更に政策の内容を検討し、内容に応じて社会全体でどう支えるかをさらに検討する」とされ、具体的な財源が示されていないことから批判の声が上がっているのは周知のとおりです。

そういえば、立憲民主党の野田佳彦元首相も9日の国会(衆院財務金融委員会)で、少子化対策の財源が曖昧であるとして「入(い)るをはからず、出(いず)るを制さず、むちゃくちゃなやり方だ」と批判していました。

当初、3兆円程度と見込まれた総額は、与党内の声にも押され調整の終盤に5千億円規模で膨らみましたが、それでも2028年度までに安定財源を確保するとし、それまでの不足分は「つなぎ国債」で対応することになっています。

野田元首相からすると、この「つなぎ国債」(返済の仕方が法律で明記された国債)が気に食わないらしい。

例によって「つなぎだろうがなんだろうが国債は国債であり、将来世代へのツケ回しだぁ〜」と言いたいわけです。

因みに、骨太の方針でも謳われ、今国会で既に成立している「GX(グリーン・トランスフォーメーション)推進法」にもつなぎ国債が使われます。

たしか10年で20兆円規模が発行されると記憶しています。

しかしながらいつも言うように、インフレ率(日本国内の生産量)が許す限りにおいて、日本政府の国債発行(通貨発行)に上限はありません。

つなぎ国債だろうが、赤字国債だろうがそれは同じです。

それに、これまたインフレ率が許す限りにおいて、日本政府が自国通貨建てで発行する国債は返済不要の政府負債です。

政府が国債を償還する必要のあるときは、国内の生産量が限界に達しインフレ率がデマンド型で上昇しはじめたときです。

現在のインフレはコストプッシュ型ですので、その必要はない。

近代資本主義社会における政府の貨幣発行(国債発行)とはそういうものです。

入(い)るをはかりて出(いず)るを制す、という考え方が通用するのは、金貨や銀貨を財源にした封建社会の話です。

即ち、「国債依存は将来世代へのツケ回しだぁ〜」と言って憚らない人たちは、ことごとく封建主義者です。