東日本大震災以降、我が国は主力電源の一つである原発の稼働を止めています。
とはいえ最近では電力不足が顕著となり、さすがに一部の原発を稼働させていますが、全面的な再稼働の動きには至っていません。
稼働しているのは、関西電力、四国電力、九州電力の一部の原発だけです。
こうした背景もあって、上のグラフのとおり、再び我が国の原油輸入の中東依存度が高まっています。
よって当然のことながら、中東の政治情勢が我が国のエネルギー安全保障に大きな影響を与えることになります。
では、その中東の政治情勢は今どうなっているのでしょうか。
まず、シリア、イエメン、リビアでは内戦が続いています。
エジプト、レバノン、チュニジアなどは気候変動や格差問題に伴う経済衰退は明らかで、権威主義の復権などもあって政情不安は高まっています。
イスラエルでは、かつてなく右派的な政権が誕生したことで、民主国家としての基盤は揺らぎ社会暴力の高まりを危惧する声が上がっています。
不安定化する中東ですが、中東における米国様の影響力の衰えもまた明らかです。
例えばウクライナ戦争勃発後、バイデン米大統領はサウジに原油の増産を要請しましたが、サウジは応じませんでした。
また、米国はイランとの核合意再建を試みるために外交的努力を重ねているようですが、それもまた頓挫しています。
あるいは去る3月に、中国が「サウジとイランの国交回復を仲介する…」と発表したのには驚かされましたし、米国が仲介したイスラエルとアラブ諸国のアブラハム合意も既に怪しくなっています。
ウクライナ戦争が長引くにつれ、米国の中東への関心は益々もって薄れていくのでしょうか。
もはやバイデン政権は、中東における米国の国益をポジティブに定義できなくなっているようです。
だからこそ、サウジへの原油増産の要請も無視され、イランとの核合意再建も無視され、内戦に苦しむ人たちが増えようが、経済的に追い詰められる人たちが増えようが、中国がサウジとイランの仲介をしようが、ただただ米国は傍観することしかできないのです。
米国の中東における影響力の低下が、果たして我が国のエネルギー安全保障及び国際情勢にどのような影響をもたらすのか、大いに懸念されるところです。
少なくとも我が国は、短期的には石油や天然ガスなど主要エネルギー源の輸入先を多様化するほかなく、長期的には新たなベース電源開発のための政府投資を拡大していかなければなりません。
政府による長期、大規模、計画的な投資がなければ、新たなエネルギー電源を開発することなど、ほぼ不可能です。
岸田内閣は今日にも『経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2023』を決定するとしていますが、政府による長期・大規模・計画的な投資が謳われることは絶対にないでしょう。
悲しいかな、それだけは断言できます。