増税も歳出改革も、財源確保の手段にはなり得ない

増税も歳出改革も、財源確保の手段にはなり得ない

我が国は、GDP比2%という他国並みの防衛費に基づく基盤的防衛力を整備しようとしています。

そのために必要な「令和5年度以降の財源」を確保するための法律案が、現在開かれている通常国会で審議されているのをご存知でしょうか。

正式な法案名は「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法(案)」です。

政治に関する情報源が「3時のワイドショー」だけのヒトたちには知り得ないことかもしれませんが、その審議が今、参議院で大詰めを迎えています。

野党第一党の立憲民主党は「将来の増税につながる…」として、内閣不信任案を見据えて徹底抗戦している模様です。

因みに、もしも内閣不信任案が提出された場合、岸田総理はそれを大義に解散を打つかもしれないとして永田町界隈を騒がしくしています。

それが「6月16日解散説」です。

私は、仮に内閣不信任案が提出されても岸田総理は「解散」を選択しないであろう、と予測しています。

もしも岸田総理が今国会を延長した場合には、この通常国会での解散は充分にあり得ますが、国会が延長されない場合、おそらくは秋の臨時国会での解散を考えておられるのではないでしょうか。

さて、財源の話に戻りますが、参議院で大詰めを迎えている「防衛費増額の財源を確保する法案」の中身をみますと、ポイントは次のとおりです。

令和5年度以降における防衛力の抜本的な強化等に必要な増額分の財源として…

1.財政投融資特別会計や外国為替資金特別会計からの繰入金を充てる

2.独立行政法人からの国庫納付金や国有財産の処分による収入など、租税収入以外の収入(防衛力強化税外収入)を充てる

…というもの。

当然、これだけでは足りませんので、財務省としては「後々の増税」を見越しての法案提出だったと推察します。

その意味で、立憲民主党が言っている「将来の増税につながる…」は的を射ているものと思います。

といっても、正しい貨幣観をもっていないことから、野党勢力の多くは国債発行による財源確保策には消極的であり、あくまでも歳出改革による財源確保を主張しているようです。

国債発行による財源確保策を主張しているのは「国民民主党」及び「れいわ」ぐらいか。

いつも言うように、歳出改革や増税は「財源確保」の手段たり得ません。

なぜなら、財源を確保するということは、それ即ち「新たな貨幣を創出すること」に他ならないからです。

歳出改革は新たな貨幣発行をもたらさず、増税に至ってはむしろ貨幣を消滅させてしまうことになります。

決定的な事実として、政府による貨幣発行は国債発行によって行われます。

その国債発行(貨幣発行)を制度的に抑制しているのが、閣議決定によってお墨付きを与えられている「PB黒字化目標」です。

先日示された『骨太の方針2023』の原案には、残念ながら「PB黒字化目標の破棄」は謳われていません。