一般的に租税とは、人々が稼ぐ所得(GDP)に課されるものであるがゆえに、経済(GDP)が成長すれば、自ずと税収もそれに連動して増えることになります。
ところが、2020年度の税収はマイナス成長にもかかわらず60兆円強と過去最高に伸び、2022年度もまた70兆円を超える勢いです。
ご承知のとおり我が国経済は、デフレとコストプッシュインフレが共存するスタグフレーション状態です。
新型コロナウイルス禍からの回復途上でもあり、人々の消費性向も企業の投資意欲も低い。
なのに、税収は増えています。
つまり、それだけ景気の変動に左右されない税収構造が構築されているということなのでしょう。
とりわけ10%にまで引き上げられた消費税は大きいのではないか。
消費税は付加価値税であることから、その会社が儲かっていようが儲かっていまいが粗利益に10%の課税がかかります。
法人税は赤字会社からは取れないし、所得税は所得に応じた課税ですので、それぞれ景気の動向に左右されるものですが、消費税は景気動向とは関係なく容赦なく取れる。
考えてみてほしい。
GDPが増えずに税収だけが増えているということは、それだけ国民サイドは赤字化しているということです。
政府部門の黒字は、民間部門の赤字なのですから。
よく川崎市政においても市税収入が増えて喜んでいるお〇〇さんがおりますが、市民の赤字を喜んでいることを理解できない残念な手合です。
行政の黒字とは、即ち民間部門からの貨幣の回収(消滅)となりますので、当然のことながら経済活動を収縮させることになります。
さて、きのう経済財政諮問会議が開かれ、少子化対策に必要な財源確保策として最大で1.1兆円の社会保障費の抑制が求められたようです。
民間議員として参加している経団連の十倉会長らが強く要請したらしい。
社会保障費抑制の具体的な中身をみますと、医療分野では「診療報酬(薬価)の引き下げ」「DXによる薬や検査の重複回避」「病院や病床の集約削減」「後期高齢者2割負担の対象拡大」「薬剤費の患者負担の引き下げ」「金融資産の多い人の保険料の引き上げ」で、介護分野では「高所得者の保険料の引き上げ」「2割負担の対象拡大」とのことです。
これらを年1800億円程度ずつ、5〜6年かけて積み上げると1.1兆円になるという。
加えて、医療保険料などに2026年度にも上乗せする「支援金」で0.9〜1兆円、税収で確保する予算から0.9兆円、そして児童手当の拡充などの対策への地方負担を含めて、合計で約3兆円規模の少子化対策となるわけです。
それにつけても、診療報酬の引き下げなど、これだけ医療費を削ってどうやって人材確保を行うのでしょうか。
あるいは現役世代が自宅で親の面倒をみなければならないケースも増えるでしょう。
なにより、医療保険料の上乗せなど、国民負担率(所得に占める税金や保険料の割合)が増えれば、益々もって経済的理由による非婚化が増えるではないか。
非婚化が少子化の最大の原因なのですから、いったい何のための少子化対策であるかわからない。
何度でも言おう。
税であれ、保険料であれ、国民の懐から「カネ」をせしめるのは民間部門の赤字化であり、政府による貨幣消滅です。
医療や介護の需要があるのであれば、その分の貨幣(国債)を発行すればいいだけの話です。
誤った貨幣観が国を亡ぼす…