来月に取りまとめられる『骨太の方針2023』(経済財政運営と改革の基本方針)に、少子化対策の大枠が盛り込まれるようです。
ご承知のとおり、岸田内閣は2024年度から2026年度の3年間を少子化対策の集中期間と位置づけています。
事業規模は年間約3兆円となる見通し。
基本的な財源は歳出改革(他の予算を削って財源とすること)に拠るとしていますが、それでも1兆円が足りない。
防衛費と同様に、これまた財源問題です。
去る22日、「次元の異なる少子化対策」について話し合う「こども未来戦略会議」が首相官邸で開かれ、財源確保策の議論が為されましたが、その会合で岸田首相は「大前提として、消費税を含めた新たな税負担は考えていない」と表明したものの、2026年度にも社会保険料(医療保険料)を引き上げ、それを財源の一部とする方向で調整しています。
医療保険料は会社員や公務員の場合、事業主と個人の折半で負担されていますが、私のように国民健康保険の場合は会社負担はありません。
現状、医療保険料は国内9,300万人の個人や企業が支払っています。
上乗せされる額は加入する医療保険の種類や所得水準によって異なります。
保険料とはいえ、国民が稼いだ所得の一部が政府に奪われるのですから、実質的には増税と何ら変わらない。
しかも、歳出改革と社会保険料への上乗せにより安定財源を確保できるのは2026年以降になるため、それまで「つなぎ国債」を発行してその間の財源不足分を埋め合わせるとしています。
「つなぎ国債」とは、将来見込まれる特定の歳入を償還財源として発行される国債のことですから、これもまた事実上の増税です。
通常、国債は償還する必要のない負債ですが、「つなぎ国債」は敢えて償還する負債なのでございます。
つなぎ国債であれ、社会保険料の上乗せであれ、要するに増税(貨幣消滅)です。
いつも言うように、貨幣を発行できる政府が、どうしてわざわざ国民の懐にある貨幣を収奪し、この世から貨幣を消滅させようとするのか理解に苦しみます。
正しい貨幣観をもたぬ者たちが政治を担えば、このように間違った政策がひたすら立案されるだけです。
それでも、対策そのものが正しいのならまだしも、対策の中身はどれも少子化対策とは言えない。
例えば、児童手当の所得制限を撤廃し、現在は中学生までの支給年齢を高校生までにするとか、3歳から小学生までの第3子以降の額も増やすとか、これらはすべて福祉政策(子育て支援策)であることに間違いはないが、少子化対策ではない。
少子化の真因は、非婚化にあります。
ここ数年、事実として有配偶出生率は上昇しており、即ち結婚できる人たちが子どもを生む数は増えているのです。
そして、非婚化の要因は、①雇用の不安定化、②実質賃金の低下、③東京一極集中にあります。
むろん、子育て支援はどんどんやったらいい。
その上で、少子化対策として①②③を解決するための政策立案が求められています。
病状を正確に把握せずして、正しい処方箋を出すことは不可能です。
残念ながら、現在の政府は「やぶ医者」です。