中国が月面開発を手掛けているのをご存知でしょうか。
「既に米国がアポロ計画で月に到達しているのに、なんで今さら…」と思われるかもしれませんが、彼の国が月面開発を進める理由の一つは、月面に豊富にある「ヘリウム3」を確保するためとも言われています。
ヘリウム3と重水素は、夢のエネルギーである「核融合発電」の貴重なエネルギー源になります。
重水素は海から存分に取れますので、あとはヘリウム3を確保するだけです。
そのヘリウム3が、月面に豊富にあるわけです。
さて、もしも核融合発電を実用化することができれば、その国は永遠のエネルギーを手に入れたも同然となります。
核融合とは、軽い原子核同士が衝突(融合)した結果、より重い原子核とともに莫大なエネルギーを発生する現象のことです。
例えば、太陽の核の中では水素の原子核同士が衝突することでヘリウムの原子核を生成しており、その過程で太陽系におけるほぼ全てのエネルギーを生成しています。
同じ重量の燃料あたりのエネルギー量で比較しますと、核融合反応は化石燃料と比べて2千万〜1億倍という試算があるなど、文字通り桁違いのエネルギー量を生み出すことが可能となります。
現在の原子力発電では核融合ではなく核分裂を使用していますが、核融合はその性質上、反応を止めることが容易であるため、チェルノブイリや福島第一原発のような深刻な事故を引き起こす可能性は極めて低いと考えられています。
なお、核融合発電は原発と同じように二酸化炭素を排出しない。
しかしながら、核融合発電を実用化するにはまだまだ膨大な時間を要するらしい。
核融合発電の構想は既に20世紀前半から存在しており、それが未だ実用化されず、さらなる時間を要するというのですから実に複雑な問題を抱えたエネルギーシステムなのでしょう。
その難易度は、現在使われている核分裂発電と比較しても桁違いのようです。
核融合反応には原子核同士を衝突させる必要がありますが、原子核は全てプラスの電気を帯びています。
理科の授業で習ったとおり、電気の性質として、プラス同士は反発し合いますので、原子核同士が近づけば近づくほど反発する力は大きくなります。
そのため、通常、融合できるほどに2つの原子核が近づくことはありません。
核融合を起こすためには、この反発を乗り越えるほど早い速度で原子核同士を衝突させる必要があるわけです。
ただ、ここが私のような素人には解りづらいところですが、原子核の速度とは、即ち温度のことらしい。
地球上で核融合を引き起こすためには、少なくとも1億℃という温度が必要のようです。
当然のことながら、そのような温度に耐えられる個体はこの地球上には存在しません。
地球どころか宇宙にも存在しないはずです。
そのため、現段階においては、核融合発電は次の2つの方式が主として検討されています。
①磁場閉じ込め方式
②慣性閉じ込め方式
ここでは詳しい説明は省きますが、いずれにしても核融合発電が実用化されるまでのハードルは非常に高いようです。
何より、核融合で発生したエネルギーとプラズマ生成のエネルギーの比率ですが、核融合で発生したエネルギーは中性子と熱という形で放出されます。
そこから電力に変換する効率は100%にはできないため、実用化のためにはさらに核融合からエネルギーを引き出す必要があります。
要するに、核融合発電というものは原理的には可能であるものの、人間社会に組み込もうとするとまだまだ時間がかかるシロモノなのでございます。
ただし、次のことだけは日本国民として考えねばなりません。
このように実用化までに計り知れない困難を要するプロジェクトに対し、中国はカネと時間を惜しむことなく取り組みを進め、エネルギー安全保障を長期的かつ計画的に見据えているということです。
プライマリーバランス(健全財政)至上主義に陥っているどこかの国とは大違いです。
それに、マリアナ・マッツカートが指摘しているとおり、米国がソフト産業で世界を席巻できたのは、採算度外視でアポロ計画を実行したからです。
それと同様に、月面開発の過程において中国は、様々な先端技術を獲得することになるでしょう。
我が日本国が、やがて中国の版図に組み込まれ「倭人自治区」となる日がまた近づきそうです。