当該ブログで何度か取り上げている問題ですが、「物流の2024年問題」というものがあります。
トラックドライバーの働き方改革の一環として、来年(2024年)から時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されます。
これによって圧倒的なドライバー不足に陥り、経済産業省は2027年に全国で24万人のドライバーが不足し、2030年には物流需要の約36%が運べなくなるものと試算しています。
その結果として、2024年以降の物流コストはさらに高騰します。
こうした物流コストのインフレ構造を放置した場合、2030年時点で最大10.2兆円の経済損失が発生するという試算もあり、私たち日本国民の生活に直結する極めて深刻な問題に直面しているのでございます。
さて、経済産業省は去る3月31日、デジタル技術を使った各種サービスの普及に向けて整備事業を示した『デジタルライフライン全国総合整備計画』の骨子を公表しました。
この計画は、社会課題解決や産業発展のデジタルによる恩恵を、全国津々浦々に行き渡らせるための計画です。
官民で集中的に大規模な投資を行い、自動運転やAIによるイノベーションを線・面で社会実装することで、働き手の賃金の向上を目指し、人手不足や災害激甚化といった社会課題の解決を図ろうとしています。
むろん、物流の2024年問題にも対応した計画であることは間違いありません。
この中で、2024年に新東名高速道路(駿河湾沼津〜浜松間)で100キロ以上の距離の「自動運転車用レーン」を設置する計画や、ドローンの安全な運用を図るため、全国にドローンの航路を設定する計画が明らかにされています。
自動運転車用のレーンは、物流産業における人手不足の解消を目指し、深夜時間帯において「自動運転」に対応したトラックを自動運転車用レーンで走行させるものです。
道路の端っこに設置されたセンサーなどで他のクルマや落下物などを検知し、道路の状況を自動運転車に情報提供して運転を支援するという仕組みになっているらしい。
計画では、2025年度までに50カ所、2027年度までに100カ所の一般道での自動運転車サービス提供を目指すとされています。
因みに、自動運転技術には、5つのレベルが定義されています。
ドライバーが車両の全ての操作を行い、車両の一部分だけが自動で操作されるのがレベル1。
車両の速度や軌道を自動で制御することができるものの、ドライバーは常に監視を行い、いつでも車両の操作を引き継ぐことができるのがレベル2。
ドライバーは一部の運転業務を自動運転システムに委ねることができるものの、緊急時には速やかに運転操作を引き継がねばならないのがレベル3。
運転手がいなくとも、ほとんどの場面で自動運転が可能であるが、例外的な状況下では運転手の介入が必要になるのがレベル4。
運転手がいなくても、あらゆる場面で自動運転が可能であり、運転手の介入を必要としないのがレベル5です。
こうした定義からすると、2024年に設置予定の自動運転車用レーンを走行できるトラックは、特定の走行環境条件のもとで、運転者を必要としない完全自動運転ができる「レベル4」の車両になります。
なお、何らかの原因で運転が難しくなった場合でも、システムが周囲の状況を判断して自動停止してくれるらしい。
米国のIIHS研究によりますと、自動運転車の導入によって交通事故は約30%減少し、渋滞時間も約40%短縮されるとされています。
むろん自動運転システムには多くの課題があり、また、自動運転システムだけで物流の2024年問題が解決されるわけでもありません。
だからこそ経済産業省は、デジタルライフラインの全国的な総合整備計画を策定しつつ、新たな物流システムの構築にむけたロードマップをも示しているわけです。
物流の2024年問題は物流業界のみならず、物流を取り巻く様々な産業に影響を及ぼします。
外国人労働者に依存することなくこれを克服するためには、生産性向上のための「たゆまぬ投資」を行い続けるほかはない。