収益性確保に苦戦、EVメーカー

収益性確保に苦戦、EVメーカー

今朝の日本経済新聞1面に「トヨタ、今期営業益3兆円」という記事がありました。

きのうトヨタ自動車は、2024年3月期の連結営業利益が日本企業で初となる3兆円になる見通しだと発表しています。

トヨタは今期の生産台数を1,010万台とし、過去最高だった前期の913万台を上回る見込みらしい。

レクサスなど、いわゆる好採算車種がよく売れているようで、今期は8,650億円の営業増益となる見込みです。

フォルクスワーゲンやテスラなどを抑え、今なおトヨタの稼ぐ力は世界一です。

だからこそ欧米勢はトヨタ潰しのために、ハイブリッド車を含むガソリン車の販売を2030年までに禁止する、いわゆるEV(電気自動車)シフトを推し進めているわけです。

フォルクスワーゲンなどは今後5年でEV中心に26兆円を投じ、米ゼネラル・モーターズもまた2025年までに4.7兆円をEV開発に投資します。

世界の主要メーカーは、2030年までにEVや電池などに対し160兆円を投じる計画です。

むろんトヨタもまた、ただ座して敗北を待つわけにもいかず、その高い収益力を生かしEV関連の投資を加速させるため、2030年までに5兆円を投じるとしています。

一方、国策としてEVシフトを進めてきた中国では、だいぶ雲行きが怪しくなっています。

これまで「EV先進国」などと自称してきた彼の国ですが、中国EVメーカーの多くが赤字を続出しているらしい。

ご承知のとおり、中国は2016年に「省エネルギー車と新エネルギー車技術ロードマップ」を発表し、その計画を進めてきました。

当該計画では、2030年までに新車販売台数の4〜5割を新エネ車にするという野心的な目標が謳われ、発表された際には実現可能性が疑問視されていたほどです。

中国が定義する「新エネ車」とは、EV、PHV、FCVのことで、中でもEVはその主力として位置づけられています。

2020年には改訂版である「省エネルギー車と新エネルギー車技術ロードマップ2.0」が発表され、さらに細かく軌道修正しつつ目標を定めています。

ここで示された具体的な数値目標は、全体の販売台数に占めるEV比率が2025年で20%、2030年で40%となっており、いかに北京政府がEVシフトを進めてきたかという熱意の表れと言っていい。

この目標を達成するため、北京政府は巨額の補助金制度を設けるなどして普及促進に努めてきたわけですが、普及台数が増えるにつれ補助金政策を継続することが難しくなり、昨年、北京政府は補助金制度を終了しています。

新型コロナの世界的大流行や半導体不足があったにも関わらず、中国では2021年にはEVの年間販売台数が675万台に達し(前年比2倍超え)、2022年もまた補助金を終了したこともあって多くの駆け込み需要があったようです。

ところが、ここにきて潮目が変わりつつあります。

中国の新興EVメーカー3社の2022年決算は揃って赤字。

例えば、その一つであるNIO(上海蔚来汽車)は約2,700億円の赤字を出しています。

Xpeng(小鵬汽車)は3月17日の決算説明会で「収益力を高めるためにコストダウンを徹底する」という言葉を繰り返して弁明に必死です。

さて、EVメーカーの赤字要因は実にシンプルで、3つのコストが積み上がっていることに尽きます。

一つは車体の製造コストの高さ。

EVを構成するユニットの中で、飛び抜けてコストが高いのがバッテリーです。

バッテリーのコストは、車体全体のコストの多くの割合を占めており、40%にも及ぶらしい。

よって、バッテリーコストを下げられないかぎり車体価格を下げられず、メーカーの利益を犠牲にした値下げを実施しているのが実状です。

二つ目は、EV車は開発費用に巨額の投資を要することです。

イーロン・マスク氏によれば、過去10年でテスラ社はEVの研究開発に約2兆8,000億円かけたとしています。

これほどの莫大な研究開発費は、自動車業界では考えられないコストらしい。

むろん、中国のEVメーカーも巨額の開発コストを投入したのでしょう。

そのコストが事業の収益に大きく影響しているものと推察します。

そして三つ目が、マーケティングコストの増大です。

これは主として、マーケティング費用と人件費のことです。

とりわけマーケティング費用は、熾烈な競争を勝ち抜き、売上を伸ばしていくためには欠かせないコストです。

このコストが売上比率の20%近くを占めており、収益を圧迫する大きな要因となっているらしい。

中国EVメーカー各社は、トータルコストに対して車体価格で回収することができていないため、赤字の常態化は避けがたいようです。

要するに、売れば売るほど赤字という状況なのでございます。

むろん、中国は国策としてEVシフトを進めていますので、これらのEVメーカーが「すぐに倒産…」ということにはならないでしょう。

問題は、これらのコスト要因は、なにも中国のEVメーカーに限ったことではないことです。

そもそも電力エネルギーに大きく依存するEVの普及が、どうして環境に良いのか疑問です。

ガソリンを効率的に使用することで電気を自家発電する「ハイブリッド車」を普及させたほうが、よほど環境に優しいと思うのですが…