製造業の「脱China」が世界的潮流となっていますが、とりわけAppleが打ち出している脱中国路線は、一つの時代の変わり目として世界からの注目を集めているところです。
Apple製品の製造現場が中国に大きく依存していることは広く知られているところで、例えばiPhoneについては、台湾のEMS大手である鴻海(ホンハイ)精密工業が組立業務を受託し、世界シェアで約70%を保持しているのですが、鴻海は大半を中国の鄭州工場で製造しており、製品自体は中国で生産しているケースが多い。
ロイターが分析したところ、2019年までの5年間で、製品(部品も含む)の全世界における製造拠点のうち、中国が占める割合は44〜47%とされています。
この比率は、2020年に41%に下がり、2021年には36%と4割を切ったものの、かなりの部分が中国製であることがわかります。
こうしたなか、Appleは生産拠点の一部を中国国外に移す計画を加速させているらしい。
米国ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、その移転先としてインド、ベトナムを有力候補として挙げています。
例えば、AirPodsやApple Watchの工場をベトナムに移管し、iPhone製造の45%をインドの工場に移管させるという。
ただ、Appleの中国脱却は、むろんコロナ・パンデミックによるサプライチェーンの混乱、あるいは中国による台湾侵攻などの地政学リスクもあって加速したのでしょうが、それ以前の段階から計画されていた面もあるようです。
Appleは2010年代から、各市場で販売する製品はその地域の製造拠点での「地産地消化」を進めてきたのは周知のとおりです。
その結果、米国、EU、中国がAppleの大きな市場となっていますが、米国とEUに関しては製造拠点が多くないため、不足分を中国から供給しているという図式となっていました。
しかしながら、中国経済の急成長に伴い徐々に人件費が上昇し、それまで中国の強みであった「生産コストの低さ」が失われつつあったのです。
低賃金労働力の提供先としても、そろそろ限界だったのでしょう。
Appleが中国でiPhoneの生産をはじめた2007年当時、ただただ安価な労働力を提供する国に過ぎませんでした。
言うまでもなく、当時の中国にはiPhoneの部品の多くを国内で生産する技術などなく、その貢献は安い労働力により、ひたすらiPhoneの輸入部品を組み立てるだけだったのです。
iPhoneの付加価値でみれば、当時の中国が生産した付加価値はわずか4%足らずと言われています。
ところが、iPhoneXが販売された2018年までには状況が一変します。
中国は組み立てだけでなく、音響部品、充電モジュール、バッテリーパックなど、iPhoneに内蔵されている高度部品の多くを生産するようになりました。
現在、中国のハイテク企業は、iPhoneの付加価値の25%以上を担っていると言われています。
今や中国は多くの製品について、ただ外国部品を組み立てるだけでなく、最先端の技術を独自に開発するようになったのです。
なぜ中国は、そこまでに至ったのか?
むろん、不当に入手した技術もあるでしょうが、それだけはないと思います。
そこには、中国共産党(北京政府)なりの産業政策と財政政策があったからに他ならない。
残念ながら今のわが国には、大規模で長期、かつ計画的な産業政策、及びそれを裏打ちする財政政策はない。
やがては、安い労働力を提供するだけの国に成り果てるかもしれない。