グローバリゼーション終焉の象徴ともいえる米中対立。
それは新たな冷戦とも言われています。
その米中対立の中の一つに半導体戦争があります。
言うまでもなく半導体は今や製造業には欠かすことのできない重要な戦略物資で、もしも半導体の供給が滞れば一気に生産活動がストップしてしまうことになります。
現に自動車業界では、半導体の供給不足から生産ラインのスピードを落とし、あるいはストップする事態にまで発展し、生産台数を落としているメーカーも見受けられます。
さて、中国が半導体を自給できる体制を構築しようとしてきたのは周知のとおりです。
ところが今、中国では多数の半導体メーカーが倒産に追い込まれているらしい。
一方、バイデン米大統領は、中国に最先端半導体の技術が流出し、それが軍事転用されるとして、半導体製造装置などを含む最先端半導体の輸出を規制する措置を発表しました。
なお、日本、米国、オランダの3か国は、先端半導体技術の対中輸出規制強化の足並みを揃えることで合意しており、「対中国半導体包囲網」を形成しています。
因みに米政府は、数年前から中国企業による先端半導体の製造技術習得を繰り返し阻もうとしています。
例えば2018年には既にASML製のEUV(極端紫外線)露光システムの対中輸出を禁止するようオランダ政府に要請しています。
ここまで半導体の製造部分での規制を強めるのは、世界の半導体業界では製造工程の細分化・専門化が進んでいるのが大きな要因です。
前工程では各段階の製造装置が米欧日の大手メーカーの独占状態になっていますので、なるほど、この部分で規制してしまえば、中国は半導体の製造がままならなくなるということですね。
むろん、中共政府もその弱点を認識し、技術向上には余念がないところでしょうが、中国の半導体製造メーカーの技術力は未だまだ日米欧の大手と互角に競える水準には至っていないとされています。
こうした米国が主導する半導体規制の効果は着実に中国半導体業界にダメージを与えているようです。
なんと中国では、2022年1月から8月までに過去最高となる3,470社の半導体メーカーが倒産しているとのことです。
因みに解散・廃業した中国の半導体関連企業は2017年が461社、2018年は715社、2019年が1,249社、2020年が1,397社、2021年が3,420社と年々増加しています。
中国国家統計局によれば、2022年8月のIC(集積回路)の生産量は、前年同月比24.7%減という記録的な減少となったとのことです。
今後は電力不足が更に生産体制を圧迫するのではないでしょうか。
技術的に中国が必要な半導体を生産することは困難です。
中国としては、産業のコメとも言える半導体を自前で製造できないことを何としてでも回避したいはずです。
そのためには、米国との政治的な妥協がどこかで必要となるはずです。
米国の対中政策が見直され、米中対立が緩和されたとき、それはそれで我が国にとっては実に厄介な政治問題です。