私の住む多摩区を含め、川崎市北部は全国でも最も高齢化スピードの早い地域です。
例えば、多摩区の75歳以上人口比率は、今後20年間で1.7倍に増えます。
ゆえに、将来に備えてこの地域の医療提供体制を強化しておかねばなりません。
とりわけ、療養病床の増床や在宅医療介護サービスの充実は喫緊の課題ですが、既に今現在でもリソース不足は顕著です。
先日、私の知人のお母様がご自宅で転倒し腰を強打され、市立多摩病院に救急搬送されました。
治療を受けた結果、即入院ということになったのですが、1週間も経たぬうちに早くも他病院(療養病床)への転院を促されています。
市立多摩病院の病床はことごとく一般病床(急性期対応)ですので、長期入院の患者さんを留めおくことは病院経営を圧迫することになってしまうからです。
といって、この多摩区には療養病床が一つもありません。
お隣の宮前区に40床、麻生区に約550床の療養病床がありますが、その稼働率は95%を超えており、常に満床状態です。
といって、我が国では未だ在宅医療介護の整備も遅れています。
結局、受け入れてくれる病院は、山梨県やら千葉県のほか、あるいは近くても八王子あたりなどの遠方の病院しかなく、患者ご本人はもちろんのことご家族にとっても大変なご負担です。
これが、私が長年にわたり警鐘を鳴らしてきた「行き場のない患者」問題です。
今回の市議会議員選挙においても、多くの候補者が「医療助成」を強くお訴えになられておられます。
むろん、それはそれで結構なのですが、肝心なことはおカネの問題よりも医療そのものを受けられるかどうかです。
このままでは、「せっかくおカネはあるのに医療を受けられない…」という事態に陥ってしまう可能性が大きいのです。
私たちは、そのことをコロナパンデミックで痛感しているはずです。
新型コロナに関わる治療費はすべて無料であり、ワクチン接種もタダでした。
よって、医療面においておカネが理由で新型コロナに苦しめられたヒトは一人もおられなかったはずです。
にもかかわらず、新型コロナウイルスに感染したのに、「救急車が来てくれない…」「受け入れてくれる病院がない…」など、医療リソース不足によって多くの人々がお苦しみなられたわけです。
そうです、究極的に大切なのはおカネではありません。
いざというとき、国民の医療ニーズに応えてくれる、即ち適切な治療を施してくれる医療提供体制なのです。
水も食料もない砂漠の真ん中で1億円の現金を持っていても実に虚しいものです。