去る4月20日、前日銀総裁の白川方明氏が英国貴族院の公聴会に参考人として呼ばれていたらしい。
英国の議員たちは、なぜ日本では量的緩和策を続けてもインフレが起きないのかなど、異次元緩和で先行する日本の事例を参考にすることで、イングランド銀行の量的緩和策の長期化が英国経済に何をもたらすのかを知りたかったのでしょう。
白川氏は英国貴族院で「インフレ率を押し上げようという日銀の努力は完全な失敗だった」と述べ、いわゆる黒田バズーカを厳しく批判されたようです。
前任者が後任者の仕事にケチをつけたい気持ちもわからなくもありませんが、白川さんの「金融緩和とは需要の前借りだから、あまり長く続けると前借り重要がやせ細ってしまうため効果がなくなる」というご説明は理解し難い。
たしか白川さんは、そもそも日本経済がデフレ状態であることを認めておられなかった人だったと思います。
というより、デフレがいかなる経済現象なのかがよく理解されていないのだと拝察します。
その上で白川さんは、現在の日本経済が抱える根本問題は、①人口減少、②少子高齢化、③生産性向上の低下であり、これらは金融緩和だけで解決することはできない、と言っておられます。
だけど、白川さんの言われる①も②も③もすべて、これらはデフレ経済の結果です。
総需要が不足するデフレ経済下では、企業は生産性向上のための設備投資を行えません。
実質賃金が低下していくデフレ経済下では、若い人たちは結婚するための経済力すら持てません。
結婚する人が減るんですから少子化と人口減少が進むのも必然です。
ゆえに、一刻もはやくデフレ経済を解消することが喫緊の課題だったわけです。
長きにわたりデフレを放置した白川さんの責任は大きい。
このデフレ経済を脱却すべく、アベノミクスの第一弾の矢として現在の異次元緩和が開始されました。
黒田総裁が就任された2013年の春のことです。
しかし残念ながら、日銀目標のインフレ率2%には全く届かず、未だデフレ経済が続いています。
あれから8年が過ぎたわけですが、「金融緩和だけでデフレを脱却できる」とした、いわゆるリフレ派の理論が悉く間違っていたことを身を以て学ぶにはあまりにも長く無駄な時間でした。
言わでもがな、金融緩和だけでデフレを脱却することは不可能です。
日本経済に必要なのは金融緩和ではなく、不足する総需要を埋めるための政府債務(通貨発行=財政支出)の拡大です。
その意味で失敗したのは日銀ではなく、PB黒字化目標を掲げてデフレを脱却するまで財政支出を拡大してこなかった政府です。
だれか英国の貴族院議員たちに教えてあがたほうがいい。
「長期的な異次元緩和を続けても一向にインフレ率が上がらないのは、日本経済が深刻なデフレ経済だからですよ…」と。
ついでに、アトキンソンというのし(熨斗)をつけて!