上のグラフのとおり、我が国の国内資金需要を見ますと企業部門がずっとプラスの領域で推移しています。
一方、政府部門(中央政府+地方政府)は、ずっとマイナスの領域で推移しています。
本来、インフレ率がマイルドに上昇していく真っ当な経済(高圧経済)においては、貯蓄率をマイナスにすべき経済主体は企業部門です。
しかしながら、我が国ではデフレという総需要(投資+消費)不足経済が続いていることから、企業は銀行からおカネを借りて設備投資やR&D等々の投資をし難い。
企業部門が資金不足とならずに貯蓄超過になっているのはそのためです。
経済成長の源泉は、企業が設備投資、あるいはR&D投資を行うことによってもたらされる「生産性の向上」です。
つまり、生産性の向上なくして経済成長なしです。
企業部門の貯蓄率が安定的にマイナス領域(資金過不足)になったときにはじめて「もはやデフレと言える状況にはない」と言うことができます。
議員と名のつく人たちでさえ、デフレの何がいけないのかをよく理解されていない人たちが多いのには困っています。
デフレが放置されると、いつまでも完全雇用が達成されず、国民総体としての所得も増えていきません。(GDP三面等価の原則)
それに、需要不足が長引くと、我が国のモノやサービスをつくる供給能力が毀損され続けますので、やがて発展途上国化していきます。
今の日本は、デフレに突入した20年前に比べればまちがいなく発展途上国化しています。
そのデフレを脱却するためには何が必要か。
むろん総需要不足を埋めること。
具体的には、政府部門がおカネを借りて(通貨を発行して)財政支出を拡大(需要創造)しなければならないわけですが、残念ながら我が国には「これ以上、借金しちゃダメ…」という勢力が幅を利かしていることから企業の貯蓄率をマイナスにするほどの大規模かつ継続的な財政出動ができません。
であるがゆえに、今の日本は経済全体としてのネットの資金需要がまったく存在しない状態です。
要するに、企業や家計など世の中全体がおカネを借りて支出を増やし、その結果、経済全体の所得を増やすという流れになっておりません。
グラフをみると政府部門の貯蓄率はマイナスで推移していますが、問題は「その規模が企業の貯蓄超過を埋めるほど充分ではない」ということです。
先日のG7サミットの宣言文には「我々は、必要な期間にわたり経済への支援を継続し、我々の支援の焦点を、危機対応から、将来に向けた強固で、強靭で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長の促進に移行させる」とあります。
要するに、財政支出の大規模かつ長期的な拡大こそがG7の合意です。
ところが、18日に閣議決定された『経済財政運営と改革の基本方針2021』にはたしかに各種の投資計画が示されておりますが、例によって「2025年度の国・地方を合わせたPB黑字化を目指す」ことが明記されています。
この財政健全化目標があるかぎり、政府が大規模で長期的な財政政策を行うことは不可能です。
この一点で菅内閣は、コンウォールでのG7合意を守る気が無いようです。