政府の輸入小麦売渡価格、抑制効果は限定的

政府の輸入小麦売渡価格、抑制効果は限定的

政府が製粉会社などに売り渡す輸入小麦の価格が4月に改定されます。

輸入小麦の政府売渡価格は、半年ごと(毎年4月と10月)に改定されていますが、前回(2022年10月)の改定ではコストプッシュ・インフレに苦しむ日本経済の現況に鑑みて価格は据え置かれていました。

よって、今回はどのくらい引き上げられるのかに注目が集まっていたわけです。

どうやら、引き上げ幅は前期比で5.8%らしい。

ウクライナ危機の影響もあるので、本来は13.1%の上昇となるところだったようですが、さすがに政府としてもコストプッシュ・インフレ対策として2期連続で価格を抑えることになったようです。

米国の中西部で主として生産されている小麦、即ちハード・レッド・ウィンターの輸出価格の推移をみますと、2021年9月から2022年2月までの価格平均(ドル/トン)が369ドルであったのに対し、2022年の3月から10月までの価格平均は448ドル、即ち2割以上の上昇となっていました。

なので、この2月までに価格が大幅に下落していれば別ですが、4月の改定は史上最大の値上げ改定になるのでは、と大いに懸念をしておりました。

しかし、引き上げ幅は史上最大にならなかったとはいえ、政府売渡価格としては過去最高を記録しています。

農水省の試算によると、今回の値上げ改定が小売価格に与える影響は、食パン1斤(202円)あたりプラス1.1円(0.5%)、家庭用薄力粉1キロ(323円)あたりプラス4.5円(1.4%)とのことで、小麦以外の他の食材、及びエネルギー価格や輸送コストの影響が大きいので小麦売渡価格の抑制効果は数円にとどまることになります。

せめて消費税を減税するか、もしくは廃止してくれれば、家計負担はもっと楽になるのに。

因みに、輸入小麦の政府買い上げの原資は『食料安定供給特別会計』から支出されます。

今回の価格抑制策による国の負担は約100億円ですので、政府の予算規模からいえば微々たるものです。

どうせなら、今回も価格を据え置けばよかったのに、と思います。

なお、農水省は今回値上げする理由を「国産小麦を推進するため…」としており、要するに「輸入小麦を据え置くと、国産小麦には不利だろっ!?…」と言うわけです。

といっても、我が国の小麦の自給率は17%ほどで、依然として国内生産量が低い。

農水省が本気で国産小麦の普及を奨励したいのであれば、供給能力の増強を促す投資支援をすべきです。