PDCAサイクルの時代は終わった

PDCAサイクルの時代は終わった

市町村、都道府県などの地方議会議員の任期は4年です。

ゆえに、当然のことながら4年に1度は必ず各自治体で選挙が行われています。

そのせいなのか、川崎市議会においても4年に1度は必ず次にような質問というか提言が議会の中から飛び出します。

「行政(市役所)は、もっと株式会社の発想をもち、選択と集中によって効率よく運営することで税収という利益を最大化すべきだ…」

一見ごもっともそうなご提案だが、残念ながら政治行政に携わる者としての資格に欠ける。

行政を法人格としてとらえるならば、国民生活を守るための「安全保障NPO」であって「株式会社」ではない。

また、行政にとって税収は利益でもありません。

租税の役割については別の機会で詳しく述べますが、少なくとも租税には「財源確保」という目的すらありません。

もう一つ、よく言われるのが「選択と集中」です。

当選したての新人議員が言うのならまだ可愛げもありますが、当選回数を重ねたベテラン議員でも恥ずがしげもなくその必要性を説く。

しかしながら「選択と集中」はまさに利益を最大化する企業(株式会社)の発想そのものです。

行政の「選択と集中」は、要するに行政(の機能)を小さくしただけで、それではいざという時に国民を救えない。

例えばこの数年間、インフラの整備の遅れによって、どれだけの国民が自然災害で死んだのかを考えてほしい。

今回のコロナにおいても、国が自治体が進めてきた病床再編(病床削減)が仇となって病床は逼迫し、あるいは住民基本台帳とマイナンバーがシステム上で紐付けされていなこと、そして保健所が未だにFAXでやりとりしていたことが明らかになりました。

営業時間の短縮や自粛休業した事業者に対する協力金を振り込むのにさえ、都道府県の行政職員のマンパワーが足りず外注している始末で、その振り込み作業にもかなりの時間を要し、未だに第三弾、第四弾の振り込みが為されていない事業者がおられます。

これらすべては「選択と集中」の結果です。

さらにもう一つ、行政が愚かにも株式会社の真似ごとをしてきたのが「PDCAサイクル」です。

P(Plan=計画)→D(Do=実行)→C(Check=評価)→A(Action=改善)

恥ずかしながら、川崎市の行政当局も採用しています。

しかし、既に不確実性の時代に突入している今、株式会社ですらも「PDCAサイクル」を見直す動きが広がっています。

その理由は概ね二つあります。

まず第一に、PDCAサイクルでは、どうしても予め決められた計画そのものが優先されてしまうことから、不確実な事態への適切な対処ができないこと。

そして第二に、不確実性時代は変化のスピードが早いため、評価して改善しているあいだに既に事態が次のステージへと進んでしまっていること…です。

ゆえに不確実性時代にはPDCAではなく、各現場の、①予測する能力、②危機を察知し認識する能力、③なにを優先すべきかの判断能力が求められます。

そのとき、それまでに蓄積されてきた過去のデータの使い方が大きな鍵になります。

さて、株式会社ですら「今やPDCAサイクルではダメだ…」と言っているなか、川崎市はこれをやり続けるのでしょうか。