梯子を外されたままの日銀

梯子を外されたままの日銀

きのう、政府は経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を次期日銀総裁に起用する人事案を国会に提示しました。

異次元緩和の修正を予想した債券市場は、政府の人事案国会提出を受けて「売り」で反応したようです。

債権市場が異次元緩和の修正を予想しているのかは、よくわかりません。

植田さんは10日の記者会見で「金融緩和の継続が必要だ」と述べていますので、新総裁誕生とともに日銀の金融政策が変更される可能性は低い。

市場は常に相場を動かす何らかの「材料」を求めていることは承知しておりますが、植田新総裁の誕生そのものは相場変動の大きな材料にはならないと思われます。

それにつけても日本経済新聞はひどい。

今朝も次のような記事を書いています。

「10年続いた異次元緩和は発行済み国債の半分を日銀が買い占めるという異常事態を招き、市場のゆがみも限界に近づいてきた」

日銀が発行済み国債の半分を保有していることが「異常事態」で「市場のゆがみ」なのだそうです。

だから「はやく金融政策を変更しろ…」と言って、ある意味で市場に媚びているわけです。

ただ、日本経済新聞が日銀の国債購入を忌み嫌うのは、よく理解できます。

なぜなら、日銀が発行済みの国債を購入すればするほどに政府の負債が消滅するからです。

即ち、この30年間、彼らが煽り続けてきた『財政破綻論』が破綻するからです。

それに日本経済新聞は「10年続いた異次元緩和が限界に達している」と言いますが、異次元緩和をやめるにやめられないのは、政府がデフレを脱却するほどに財政支出を拡大しないからであって、けっして日銀が悪いのではない。

もともと黒田日銀の異次元緩和はアベノミクス第一の矢としてはじまりました。

そして、アベノミクス第二の矢である財政支出の拡大との合わせ技により「デフレを脱却する…」という戦略だったわけです。

ところが、第二の矢である財出拡大は最初の1年目だけで終わってしまいデフレを脱却できず、デフレを脱却できない状態で異次元緩和をやめてしまうと景気が更に悪化してしまうため、日銀は今なお緩和を続けているに過ぎません。

つまり、日銀は梯子を外されたのです。

さすが財務省の御用新聞だけあって日本経済新聞は、梯子を外した政府(財務省)を批判することなく、梯子を外された日銀の政策を「市場を歪めているのはおまえだ…」と言って批判しているわけです。

日本経済新聞だけを読んでいたら、正しい経済情報を得ることは難しいのがよくわかります。

もしかすると日本経済新聞は、なぜ通貨発行権を持つ政府がわざわざ国債を発行しなければならないのか、という基礎知識すらないのかもしれません。

要するに、政府はお札を刷る(現実には銀行預金ですが…)ことで支出を拡大することが可能なのですが、敢えてわざわざ国債を発行して民間銀行から日銀当座預金を調達しています。

その理由を日本経済新聞は説明できるのでしょうか。

はなはだ怪しい。