昨年6月、中国は3隻目の空母となる「福建」の進水式を行いました。
空母「福建」の実戦配備は来年以降になるようですが、昨年12月に岸田政権が閣議決定した「反撃能力」には、当然のことながら「福建」を牽制する狙いも込められていると思われます。
名称を「福建」としたのは、おそらくはかつて習近平氏の勤務地が福建だったこともあってのことかと推察します。
さて、はたして空母「福建」は日米にとって大いなる脅威となりえるのでしょうか。
「福建」の空母としての大きさは概ねジェラルド・フォード級(幅76.8m、全長333m)で、まず気になるのがカタパルト(艦載機の発艦システム)です。
1隻目の空母「遼寧」、2隻目の空母「山東」には、ともにカタパルトは搭載されておらず、スキージャンプ方式で発艦しなければなりませんでしたが、ようやく「福建」にはカタパルトが搭載されたとのことです。
ただ、蒸気式ではなく電磁式らしい。
電磁式となると、かなりの電力量を消費することになりますが、原子力空母ではない「福建」にそうした大量の電力を賄いきれるのかどうか。
電力の問題だけではなく、運用面での蓄積のない中国が失敗の許されない実践において使いこなせるようになるためにはまだまだ相当の時間を要することになりそうです。
この電磁カタパルトをまともに運用できるまでには「あと4〜5年を要するのではないか…」とも言われています。
次いで気になるのが艦載機です。
「福建」に搭載される戦闘機は第4世代のJ-15とも、第5世代のJ−20とも言われていますが、いずれにしてもF−22の敵にはならないでしょう。
そして、もっとも重要なのが海軍全体として空母を運用する力です。
例えば米海軍は、全部で11隻の航空母艦を保有し、9個(9ユニット)の空母打撃群を運用しています。
昔は「空母機動部隊」とか、「空母戦闘群」などと言いましたが、2004年以降、米軍は「空母打撃群(Carrier Strike Group)」と呼称しています。
その戦闘能力があまりにも他国を圧倒していることから、米軍の空母艦隊と海上でまともに艦隊戦を戦える国はほぼなくなり、もしも戦端が開かれれば、米軍の空母艦隊が敵地を一方的に打撃することになることから「空母打撃群」と呼ぶようになったわけです。
空母打撃群は、一つのユニットで1隻の空母(艦載機約80機)、1隻のミサイル巡洋艦(タイコンデロガ級)、2隻のミサイル駆逐艦(アーレイ・バーク級)、1隻の攻撃型潜水艦(バージニア級)、1隻の補給艦から成り立っています。
1ユニットから発射可能なミサイル数は核を含めて、600発以上とも言われています。
むろん、護衛の巡洋艦も駆逐艦もイージス機能を有しています。
因みに、空母打撃群1ユニットで、一国の軍事力を上回ります。
例えば、米海軍の第7艦隊が横須賀を母港にして西太平洋を中心に展開していますが、この1ユニットですら、わが国の陸海空自衛隊が全力をあげて襲いかかっても勝てないはずです。
米海軍は、そうした空母打撃群を9ユニットも運用しているわけです。
これに米海兵隊、米陸軍、米空軍の航空戦力をも含めれば、米軍の空戦能力がいかに他国を圧倒しているのかがわかります。
むろん中国は、そのことをよく理解しています。
だからこそ簡単には台湾に侵攻できる状況ではないし、複数の空母を運用できるように必死になっているわけです。
航空母艦(空母)は、「動く領土…」と言われているように最強の通常兵器です。
わが日本国の領海を含めたEEZ(排他的経済水域)の面積は約447万平方キロで、国土面積38万平方キロの約12倍の広さを持っています。
なんと、この広さは世界第6位です。
ゆえに日本の海上自衛隊も、航空母艦を保有すべきだと思うのですが…
それがダメなら、せめて災害用に原子力防災空母をつくってほしい。