昨年来の輸入物価高騰により、エネルギー部門や食料品部門を中心にコストプッシュ・インフレに見舞われています。
一方、わが国は1997年以来、依然としてデフレ経済の中に在ります。
このことは、統計的に裏付けられた歴然たる事実です。
ところが、このように言うと「いや、そんなはずはない。小泉内閣(2002〜2006年)時代は景気が良かったはずだ…」と反論する人(ネオリベラリスト)たちがいます。
彼ら彼女らはその根拠として、2002〜2006年の実質GDPが右肩上がりに増えていたことを挙げる。
この時期、実質GDPが増えたのは事実です。
事実ですが、GDPが増えたのは輸出が増えたからです。
GDP = 国内の消費と投資 + 純輸出
なので、どんなに国内経済がデフレでも、それ以上に輸出が伸びればGDPは拡大します。
なぜ輸出が伸びたのかというと、この時期、輸出先の米国経済が住宅バブルだったからです。
デフレとは国内の消費と投資の伸び悩みですので、輸出が伸びてGDPが拡大することとデフレは別問題なのでございます。
とりわけ、小泉内閣が急激に進めた構造改革は、株主資本主義とも言える「グローバリズム」に対応するための政策にほかなりませんでした。
グローバル経済は、それを進めれば進めるほどに、輸出企業の利益が国民の利益につながらなくなります。
現に、輸出企業が儲けたことで2002年から2006年まで確かに日本のGDPは増えたわけですが、それとは反比例して日本の労働分配率や実質賃金は下がり続けました。
ゆえに、2002年から2006年までの景気回復は「実感なき景気回復…」などと揶揄されていたのです。
ご承知のとおり、グローバル市場ではいかに人件費を引き下げるかが企業の優劣を決します。
しかもこの時期の日本経済は、デフレのために実質為替レートでも円安でしたので、輸出企業には申し分ない環境であったはずです。
即ちグローバル経済とは、国内経済がデフレであればあるほどに、国民が貧困化すればするほどに輸出企業とその株主は儲かるという極めて歪(いびつ)な経済なのでございます。
労働分配率や実質賃金が下がり続ければ、多くの人達が結婚して子供を産むチャンスを奪われ、子育てするにも多大なる経済負担を強いられます。
やむを得ず共働きするほかない家庭が増えれば増えるほどに、今度は保育所の待機児童が増えてしまうという悪循環に見舞われてきたわけです。
それでいて保育士は、給与水準が全産業平均に比べても低いために離職率が高い。
保育士だけなく、介護サービスに従事する方々の給与水準が低いのは周知のとおりですが、これらは政府による緊縮財政が起因しています。
そして政府による緊縮財政(財政収支の縮小均衡主義)が、25年にわたるデフレ経済を招いています。
デフレ経済は政策論の間違いの結果であり、人災です。