小幡績(おばた せき)という慶応義塾大学大学院准教授がいる。
氏によれば「このまま行けば日本の財政破綻は避けられない」らしい。(2021年11月27日、東洋経済オンライン)
加えて「MMT(現代貨幣理論)は大間違い」だとも言う。
京都大学大学院の藤井聡先生は「MMTに噛み付いてくる人はたいていお〇〇さん…」と仰せでしたが、小幡氏もその類か。
因みに、MMT(現代貨幣理論)は、たんに「現代の貨幣とは、こういうものですよ!」と歴史と事実を踏まえて貨幣を定義しているだけで、べつに政策でも奇策でもなんでもない。
よって、「MMTは間違っているぅ〜」という物言いは「ニュートンの法則は間違っているぅ〜」と言っているに等しい。
MMT批判者(財政破綻論者)の常として、彼らは必ず「MMTによれば、政府の国債発行に上限はないと言うが…」みたいな枕詞をつけます。
小幡氏も「日銀が国債を買い続けるから問題ないという議論は、100%間違っている」と述べています。
しかしながら、MMTはそんなことは言っていません。
ちゃんと「政府の通貨発行(国債発行)にはインフレ率(供給能力)という制約がある」と言っています。
MMTが主張していないことを、あたかも主張しているかのように嘘の前提をつくってそれを批判するというやり口です。
これをストローマン・プロパガンダと言います。
自分に都合のいい藁人形(仮想敵)を仕立てて、それを攻撃して自分の間違った論を正当化するプロパガンダ手法です。
この種の人たちに対し、「では、日本政府がデフォルト(債務不履行)するプロセスを説明してみよ…」と質問すると、「それは市場の信任が揺らいでぇ〜」みたいな抽象論で煙に巻く。
まことに情けないことだと思うのですが、彼ら彼女らは「市場の信任」なるものをまともに定義することもできない。
もっかのインフレについても「コロナ禍対策で政府が定額給付金などで財政支出を拡大したからだぁ〜」と言い張る輩もいます。
言わでもがな、わが国で発生している一部インフレは輸入物価高騰(コストプッシュ)によるものであって、政府による財政支出(デマンドプル)によるものではありません。
詰まるところ、貨幣に対する正しい理解が欠如しているがゆえに間違った現状認識に陥ってしまうのでしょう。
もしかすると彼ら彼女らは、おカネ(通貨)が発行される仕組みさえまともに理解していないのかもしれない。
おカネは需要に応じて発行されます。
「おカネを発行するとインフレ率が上昇する…」というのはたんなる思い込みに過ぎません。
インフレ率は供給能力に応じて決まるもので、マイルドにインフレ率が上昇していく経済こそが理想的な経済です。
このことは歴然たる事実です。
因みに、第二次安倍内閣が発足して以降(2013年以降)、黒田日銀が異次元緩和を行って「日銀当座預金」というおカネを増やしに増やしてきましたが一向にインフレ率は上昇しませんでした。
なぜか?
日銀当座預金は需要(名目GDP)に応じて発行されたおカネではないからです。
名目GDP = 政府支出 + 民間支出 + 純輸出
コストプッシュ・インフレとデフレが併存している現在の日本においては、民間支出の拡大によって名目GDPを増やすことは期待しがたい。
ゆえに、政府による支出拡大を期待するほかないのですが…
財政破綻論者たちの垂れ流すデマが、わが国に必要な正しい財政政策を阻んでいます。