ロシアによるウクライナ侵攻から1年が経とうとしています。
戦争の展開を予測することは誠に困難ですが、国際的にはロシアが敗北に向かっているとの見方が支配的のようです。
であるのなら、なおさらのこと戦争の長期化は避けられないものと推察します。
なぜなら、プーチン大統領にとっては「敗北の影響」をより最小化するためにはそれしか手段がないと思うからです。
少なくとも現段階においては、ウクライナが提示する条件でロシアが停戦に合意する可能性はほぼゼロ%です。
ウクライナにとって、あるいは世界にとって最悪となるシナリオは、双方が戦闘をエスカレートさせた挙げ句のうえでロシアが敗北しそうになることでしょう。
そうなれば、プーチン大統領はさらに戦争の長期化を試みることとなり、場合によってはウクライナを支援する国でも破壊活動を展開するかもしれないし、もしかするとウクライナに対し戦術核を使用するかもしれない。
もう一つ考えられるシナリオは、西側諸国が切望するようにプーチン政権の崩壊にともなうロシアの敗北です。
その場合、ロシアは戦闘を継続できなくなりますので戦争は即座に終結します。
クーデターや内戦が勃発すれば、1917年のボルシェビキの政権奪取後に起きたような事態に陥ることになるでしょう。
それにつけても、ウクライナ戦争が食糧危機に追い打ちをかけていることも深刻な問題の一つです。
ウクライナ戦争は世界の穀物供給を大きく混乱させていますが、とりわけイエメンなど穀物輸入に大きく依存する国々が飢餓に陥っています。
ロシアの同盟国であるベラルーシに対する欧米の制裁も、特定の農産物へのアクセスを低下させていますので、ウクライナ戦争が続くかぎり食糧価格の高騰も続くことになります。
既に世界では8億2000万人(世界人口の約1割)以上が毎日空腹の状況に見舞われており、食糧コストは10年でもっとも高いレベルに達しています。
むろん、わが国も深刻な影響を受けています。
日本は年間消費量の約85%にあたる約600万トンの小麦を海外から輸入していますが、4月に改定される小麦の政府売渡価格が、なんと4割増しになるらしい。
小麦の価格が上昇すれば、それに引きずられて他の穀物や食品の価格も上昇します。
価格高騰だけでなく、農業生産に必要な肥料や飼料などの輸入も滞っておりますので、今年はまだしも来年はどうなるかわからない。
岸田内閣は「経済安全保障」の必要性を説いていますが、そこには「食料安全保障」「食料自給率」についての言及はありません。
農業政策の目玉と言えば、輸出振興とデジタル化に言及されているだけです。
食料や生産資材が高騰するなか、中国などに対する「買い負け」が顕著になっており、国民の食料確保や国内農業生産の継続に不安が高まっています。
そんな中で前面に出てくるのが輸出振興とデジタル化というのは、政府の危機認識力が欠如していると言わざるを得ないところです。
むろん、輸出振興を否定するわけではありませんが、食料自給率が世界的にも極めて低い37%というわが国において食料危機が迫っている以上、行うべきは輸出振興でなく、国内生産確保に全力を挙げることではないでしょうか。