再び進む東京一極集中

再び進む東京一極集中

きのう(1月30日)、総務省が住民基本台帳に基づく2022年の『人口移動報告』を発表しました。

人口移動報告とは、都道府県をまたいで引っ越し、転入届を出した人の移動を集計した政府統計です。

因みに、2013年までは日本人の移動のみを集計していましたが、2014年以降は外国人の移動も含んでいます。

結論から言いますと、東京一極集中が再び加速化しそうです。

例えば、東京都の転入超過(転入者が転出者を上回った数)は3万8023人で、2021年よりも3万2590人増え、3年ぶりに拡大しました。

東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)でみると9万9519人で、2021年と比べて1万7820人増えており、日本人に限れば27年間連続での転入超過となります。

また、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)、及び大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)という大都市圏でさえ、それぞれ1万6218人、2347人の転出超過となっています。

都道府県別では、転入超過は宮城、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野、滋賀、大阪、福岡の11都府県だけで、残る36道府県はことごとく転出超過です。

2021年はご承知のとおりコロナ禍の真っ只中ということもあり、テレワーク普及などの影響で東京都への流入は減少し、転入超は5433人にとどまっていました。

なお神奈川県、埼玉県、千葉県の3県も、2022年は21年より転入超過数が減っています。

テレワークを巡っては出社を再開する動きも出ているのは周知のとおりです。

ある調査では、2020年5月に32%だったテレワーク実施率は2022年7月には16%まで減り、いったんは揺り戻しが起きた形となっていますが今後はどうなるか。

新型コロナが季節性インフルエンザ並みの扱いとなり、経済活動が再開されるに連れ、再び東京圏への一極集中が進んでいくものと思われます。

私が東京圏への一極集中を問題視する理由の第一は災害対策上の問題であり、第二は少子化の問題です。

世界有数の自然災害大国であるわが国において、総人口の約3分の1が東京圏に集中しているのは災害対策上、及び安全保障上においても極めて危険で、できる限りリスク分散する必要があります。

ゆえに地方分散(地方分権ではない)を進め、地方と地方を高速道路や新幹線等でネットワーク化するべきです。

もう一つの問題である少子化ですが、東京への一極集中が少子化の原因の一つとなっているのをご存知でしょうか。

少子化の最大の問題は、非婚化です。

子供を産まない人たちが増えているのではなく、実質賃金の低下など経済的な理由から結婚そのものができない若者が増えているのが実状です。

近年、既婚女性の出生率は上昇しています。

そのことは統計からも明らかです。

要するに、結婚できるほどの経済力を有した若者たちの多くは、子供を産んでおられるのでございます。

なので、まずは実質賃金を上昇させることが最大の少子化(=非婚化)対策となります。

次いで必要な対策が、東京一極集中の是正です。

ご承知のとおり、47都道府県で最も出生率が低いのが東京都ですが、その東京都に人口が流入しているわけですから少子化が進むのも当然です。

だからこそ、田中角栄元首相が言ったように、全国的な交通ネットワークを整備構築して地方分散を実現する「均衡ある国土の発展」が求められているのでございます。

あのとき、角栄先生の「日本列島改造論」が頓挫しなければ、私たち日本国民は今なお東京一極集中の弊害に苦しむこともなかったでしょう。