マスメディアのミスリードによって、日本国民の多くは「日本は借金で大変だぁ…」と誤解されているところですが、確固たる事実として我が国は紛れもなく世界最大のおカネ持ち国家です。
よく巷で「あのひとはおカネ持ちだぁ」などという言い方をしますが、国家ベースでみた場合、その国のおカネ持ち度合いを示すのが「対外純資産」です。
我が国の対外純資産は、2020年末時点で356兆9700億円となり、なんと30年連続でダントツの世界第一位です。
どんなに政府債務残高対GDP比率が高かろうとも、我が国は海外に莫大な金融資産をもっており、そこからあがる所得収支は他国を圧倒しています。
即ち、日本の持つ対外資産(1146兆円以上)から上がる所得収支の黒字が我が国の経常収支の黒字を最大化し、そのことがまた対外純資産を更に引き上げるというサイクルになっています。
上のグラフのとおり、国や地域別でみますと我が国に次いで対外純資産が多いのはドイツです。
その額は日本円に換算して323.5兆円。
3番目は香港(223.1兆円)、4番目は中国(222.9兆円)、5番目はノルウェー(118.6兆円)となり、おどろくなかれ世界最大の対外純債務国は米国で、その額は1460.4兆円にのぼっています。
だからといって、米国が世界最大の貧乏国であるはずがないことなど言うまでもありません。
対外純資産は経常収支の結果であって、あくまでもその国の経済力を表すのは「モノやサービスをつくる力」です。
もっと言うと「所得(GDP)を生み出す力」となります。
我が国は30年連続で対外純資産世界一を維持している一方で、この20年間、GDPを成長させることができなかった世界で唯一の恥ずかしい国なのでございます。
日本の対外純資産が世界で一番多いと言われても、私たち日本国民が「自分たちがおカネ持ちである」という実感をもてないのはそのためです。
むろんGDPが成長していない最大の理由は、政府によるデフレ放置です。
デフレとは総需要(投資と消費)が不足する、いわば貧血経済です。
これを解消することが我が国政治の最重要課題なわけですが、例え…どんなに金利を引き下げようとも、どんなに信用保証枠を拡大しようとも、どんなに規制緩和しようとも、どんなに行政が歳出削減しようとも、残念ながら民間部門(家計と企業)の活動だけで総需要不足を穴埋めすることは絶対的に不可能です。
ゆえに、政府による大規模かつ長期的な国債(貨幣)発行と、政府支出の拡大による需要創出が必要となります。
そうした正しい政策の妨げとなっているのが「日本は借金で大変だぁ…」世論です。
世界では今、先進各国が債務残高を縮小するための健全財政から、投資需要を拡大するための積極財政へと舵をきりはじめています。
あの緊縮の権化たるドイツですら、です。
因みにドイツは共通化ユーロ加盟国であり、自国通貨建てで国債を発行することができません。
一方、我が国は自国通貨建てで国債を発行でき、かつ変動相場制を採用する主権通貨国であることから、ドイツなどEU各国とは異なって財政制約などありません。
その日本が未だにPB(プライマリーバランス)の黒字化目標を破棄できないでいます。
PB目標を破棄できなければ、我が国は亡国にむけて転げ落ちていくばかりです。