去る16日、日銀から輸入物価指数の速報値が発表されました。
上の表をご覧のとおり、2020年に比べて全体として1.7倍にまで上昇しています。
しかしながら、現今の物価上昇は景気が良くなって需要が増え続ける良性インフレ(デマンドプル・インフレ)ではなく、主として輸入物価高騰を原因とする悪性インフレ(コストプッシュ・インフレ)です。
デマンドプル・インフレの場合、価格の値上がり分が国内生産者の所得になりますので、GDPと実質賃金は上昇していきます。
高度経済成長期(1955年から1973年までの19年間)の日本がそうでした。
一方、輸入物価の高騰を主因とするコストプッシュ・インフレの場合、価格高騰分は国内生産者の所得にはなりません。
では、だれの所得になるのでしょうか?
むろん、外国の生産者の所得になります。
国内生産者の所得にならず、物価だけが一方的に上昇していくわけですから、日本国民の実質賃金が下落し貧困化するのも当然です。
ただ、輸入物価高騰への対応は理論的にそんなに難しい話ではなく、輸入物価高騰分を政府が財政支出により負担するだけでいい。
その財源を増税によって賄う必要もなく、ふつうに国債を発行すればいい。
要するに、私たち国民(生産者や消費者)が外国の生産者に支払う分を政府が負担すればいいだけの話です。
ところが、日本政府は国民のために負担するどころか、私たち国民から所得を奪っています。
それが消費税です。
前述のとおり、輸入物価が上昇した場合、国民は上昇分の所得を外国に奪われているわけですが、それと同じように、消費税(10%)の分、私たち国民は政府によって所得を奪われています。
消費税は政府による強制的な物価上昇ですので。
要するに、いま私たち日本国民は外国と政府に所得を奪われているのでございます。
よって、いま日本政府が行うべき物価高騰対策は、3つあります。
①輸入価格上昇分を吸収するための財政出動
②消費税の減税もしくは廃止
③資源・食料等の供給能力の増強(投資・補助)と国産化
…①②③、いずれも財政支出の拡大(歳入<歳出)政策です。
これらの政策を行うことで、コストプッシュ・インフレからデマンドプル・インフレへの転換が可能です。
因みに、コストプッシュ・インフレのもとで利上げを断行すると、景気が強制的に抑制され、供給能力も強化されませんので物価がさらに上昇します。
結果、私たち日本国民の所得(実質賃金)は減り続けることになります。