厚生労働省は、コロナ禍で収入が減少し生活が困窮している世帯を救うために『生活福祉資金の特例貸付』という制度を設けました。
当該制度による貸付は…
①コロナ禍の影響を受けて休業等により収入が減少、もしくは緊急かつ一時的な生計維持のためのおカネを必要とする世帯を対象にした「緊急小口資金」貸付
②収入減少や失業等の生活困窮で日常生活の維持が困難となっている世帯を対象にした「総合支援資金」貸付
…の二種類があります。
なお返済については、①②ともに、返済する時点において引き続き所得の減少が続き、住民税非課税世帯に該当する場合には返済が免除されることになっています。
当該制度の申請期間は、①②ともに昨年9月末をもって既に終了し、今年の1月から返済がはじまることになっていたのですが、日本経済新聞社は昨年10月末時点で既に63万件分の返済免除が決定されていること、あるいは貸付総数の3割超にあたる106万件が返済免除を申請していることをもって「コロナ禍でスピードが優先され、制度設計に甘さがあった…」という批判記事を書いています。
しかしながら前述したとおり、返済が免除されるのは住民税非課税世帯です。
コロナ禍のみならず、コストプッシュ・インフレという強烈な経済ダメージまで受けているわけですから、当該世帯の困窮状況は察するに余り有ります。
しかも、この状況下で消費税まで負担させられ、今年の4月以降には電気料金が更に値上げされる予定です。
因みに、昨年9月に据え置きされた小麦の政府受け渡し価格も、今年4月は据え置き分も含めて値上げされるようですので他の食料品にもその影響は及ぶでしょう。
わが国経済がおかれた状況は実に深刻なのです。
仮に、貸付件数の3割超の全てが返済免除されても、その財政負担などたったの5,000億円程度ではないか。
生活困窮世帯を少しでも救えるのであれば、5,000億円など安いものです。
日本経済新聞にとっては、生活困窮者を救うことよりもおカネのほうが大事なのでしょうけど。
貨幣、財政、経済についてあまり詳しくない日本経済新聞に申し上げますが、現在、わが国で起きているインフレは財政赤字が招いているのではありません。
例え5,000億円の返済を免除したところで、今のインフレに拍車をかけることもないでしょう。
そして、主権通貨国である日本政府が、自らの債務で破綻(デフォルト)することなどあり得ず、国債の利子率は中央銀行が操作できる政策変数です。
よって、政府財政の赤字が国債金利の上昇をもたらすことなど、わが国ではあり得ないのでございます。
財政(おカネ)のために政治があるのではありません。
政治の手段として財政(おカネ)があるのです。
むろん、ここでいう財政とは「健全財政」のことではなく「機能的財政」のことです。