高温ガス炉と水素エネルギー

高温ガス炉と水素エネルギー

初夢とは、年末から元旦にかけて見る夢のことではなく、元日から二日にかけて見る夢のことを指します。

要するに昨夜に見た夢こそが初夢ですが、皆様はどのような夢をご覧になられたでしょうか。

さて、ことしの干支は癸卯(みずのと・う)です。

癸(みずのと)は草木の種子の内部が次第に長さを測ることができるほどに形作られた状態を示し、卯(う)は「茂る」や「蔽う」の意を示していることから、癸卯は草木が地面を蔽う状態を表します。

なお、卯に当てた動物が「兎(うさぎ)」であるのは、古事記に登場する「因幡の白兎」の話のほか、古来より様々な諺や慣用句としても使われ、かつ食用としても人々にとって身近な存在であったからでしょう。

また、兎は敏捷に前進することから武将の兜の意匠としても好まれていたところです。

今年こそは兎のように躍動・跳躍できるよう、正月ぐらいは明るい話題をブログにしたいと思い、今朝は「超高温原子炉」の話題を取り上げます。

超高温原子炉とは、現在、日本が研究開発を進めている次世代の原子炉の一つです。

その名のとおり、1600度もの高温で放射性物質を扱うために「超高温原子炉」と呼ばれています。

原子炉と聞くと「危険なのでは?」とお考えになる方々もおられるのではないでしょうか。

確かに、3・11の震災において福島第一原発の事故が大きな問題になりました。

実際、この問題を受け全国にある原子力発電は停止され、そのほとんどが現在も非稼働となっている状態です。

ただ、あの事故は原子炉というハードに問題があったわけではなく、それを運用する側のソフトに問題があったのですが…

例えば、津波対策をしていなかったこと、非常用発電機が地下だけにしか設置されていなかったことなどです。

それを差し引いても、多くの人々にとって「原発は怖いもの…」という強烈な印象を植え付けてしまったのは実に残念です。

しかし、超高温原子炉は一般的な原子炉と比べて圧倒的に安全です。

脱炭素社会に貢献できるとして、いま注目を集めています。

超高温原子炉は「高温ガス炉」と定義される原子炉のことを意味しており、一般的な原子力発電で使われる軽水炉との大きな違いは、燃料体を覆う材料や構造が異なっている点です。

軽水炉の場合、金属で燃料体を覆っていますが、高温ガス炉の場合はセラミックスで4重に覆っていることから耐熱性が非常に高いのが特徴です。

実際、1600度もの超高温下においても、核分裂生成物を閉じ込める機能は維持されることが実証されています。

むろん、これは計算や仮説などではなく、実験により証明されたということが重要です。

また、軽水炉においては冷却に水を用いるのに対し、高温ガス炉においてはヘリウムガスを使うという違いもあります。

このことにより、従来では300度程度の温度制限があり、発電に使えるのは蒸気タービンのみだったのですが、高温ガス炉では1000度もの熱を取り出すことができ、より高効率なガスタービンを用いることが可能とのことです。

蒸気タービンの発電効率が35%程度に留まっているのに対し、ガスタービンにおいては45%以上になることもあるので、より高効率な発電が可能なわけです。

なお、この冷却方法を採用することで3・11で問題になったような炉心溶融や水素爆発のリスクは無くなります。

そして熱源の高温化によって、発電のみならず、水素の製造や海水の淡水化、暖房への利用など、様々な用途への応用が期待されるところです。

こうした大きなメリットのある高温ガス炉ですが、世界で稼働しているのはわが国と中国のみです。

しかも高温ガス炉の安全性を実験によって証明したのは、日本が世界初です。

要するに、この安全性の高い新たな発電手段である高温ガス炉について、わが国は世界トップレベルの技術を誇っているわけです。

加えて私が特に期待しているのは、高温ガス炉が水素の製造に大きなメリットを有していることです。

それは、これまで製造時に排出されていた温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を出さず、大量の水素を高効率、低コスト、かつ連続して製造できるという利点です。

実際、高温ガス炉を用いて毎時間92リットルもの水素を製造するのに成功した実績もあるらしい。

水素はエネルギーを貯蔵できる次世代の物質として期待されていますが、一方で問題となっているのは二酸化炭素の排出です。

これは、従来の水蒸気改質法という方法においては、化石燃料を大量に用いて水素が製造されているためです。

因みに、再生可能エネルギーによる電気で水を電気分解する方法についても、コストや供給が不安定という問題があり普及していない状態です。

しかしながら、熱化学法を用いれば化学反応により水素を取り出すことが可能で、反応剤は循環するために廃棄物も出さないという特徴があります。

この製造法と高温ガス炉を組み合わせることで、よりクリーンに大量の水素が製造できるということになります。

現在、経済産業省は、この新しい水素製造の方法を実用化すれば、今後のカーボンフリーな発電に期待できるとして、「2050年には水素製造コストを天然ガスと同程度の12円/Nm3にする」という目標を掲げています。

もしも可能であるのなら、もっと目標年限を前倒ししてもらいたい。

世界は「SDGs」と「電気自動車の普及」の名のもとに、高技術ハイブリッド車を生産するトヨタやホンダを潰しにかかっています。

本当は、電気自動車よりもハイブリッド車のほうが低コストで環境に優しいにもかかわらず。

やがて、ハイブリッド車が販売できなくなるのなら、よりクリーンに大量の水素を製造できる日本としては水素自動車市場で逆襲することはできまいか。