日本の平和

日本の平和

鉄血宰相と呼ばれたプロイセンの指導者ビスマルクは「世界が五つの大国による不安定な均衡に支配されている限り、ドイツは3大国の1国になるように努力しなければならない」と言っていました。

たしか、1880年くらいのことだったと思います。

現在の3大国と言えば、米国、中国、ロシアとなりましょうか。

そのうち2大国(中国、ロシア)は、ともに米国とは距離を置き、相互に接近しています。

あまり報道されていませんでしたが、今年の6月、マドリード・サミットが開かれた際、NATO(北大西洋条約機構)の首脳たちはロシアを「大西洋同盟に対する明白な脅威」と改めて位置づけた一方、今後はロシアだけでなく中国にも焦点を合わせるという決意を示しています。

「中国はヨーロッパ・大西洋の安全保障にシステミックな課題を突きつけており、その野心と政策はNATOの利益、安全保障、価値を脅かしている…」と。

現在の米国には、中国・ロシア双方と同時かつ無制限に競い合い、必要ならば対決も辞さないという覚悟まではないようですので、NATO、クアッド、オーカスなどの多様な同盟勢力の組み合わせにより中露を封じ込めようとしているのだと思います。

対する中国とロシアは核武装国であり、政治的、経済的、軍事的パワーを世界規模で展開する力を有し、ともに連携しています。

といって中国とロシアが制約のない同盟関係を形成することは不可能なのでしょうが、欧米が主導する世界秩序を再編しようと目論んでいることは確かです。

こうした新しい地政学的現実を、我が国の政治家たちはどのように俯瞰しているのでしょうか。

残念なのは、「在日米軍は日本を守るために存在している…」と未だに誤解している国会議員が多いことです。

あたりまえの話ですが、日本の国土を軍事的に守るのは自衛隊の役目です。

日米安全保障条約は、日本(自衛隊)に先んじて米国が日本のために戦う義務を課しているわけではありません。

自衛隊法にも謳われているように、自衛隊は我が国の独立と平和を守るための組織なのです。

ただ、どんなに防衛費を増やしても日本一国で守りきることは困難なので、集団安保体制をとっているだけです。

それに、そもそも在日米軍基地にある米軍の防衛力はすべからく動的防衛力であり、日本の国土を守るための防衛力ではありません。

例えば、普天間・佐世保・横田・八戸・横須賀等の米軍基地は、基地周辺そのものを護るための軍事力ではなく、あくまでも世界(地域)の平和維持のための基盤的防衛力なのです。

そして我が国もまた独立国家(主権国家)として集団安保体制に積極的に参加すべきあり、世界の平和、あるいは地域の平和を維持することが、結果として日本の平和につながることを私たちは理解しておくべきです。