人間の体は低血糖が続くと、はじめは倦怠感や手のふるえ、あるいは冷や汗などの自律神経症状があらわれ、やがて重症化すれば意識消失や昏睡を起こして命にかかわる危険な状態に陥るという。
医師によれば、低血糖を軽くみて放置することなく正しく対処することが大切である、とのことです。
軽くみていると命にかかわるという点では、デフレ経済も同様です。
例え先進国であろうとも総需要が不足するデフレ経済が続いてしまうと、国力の源泉たる各種供給能力が毀損され続けますので最終的には発展途上国になります。
デフレにより需要増を見込めない企業は、R&D投資や設備投資を減らすとともに人件費を抑制するなどの雇用調整を行います。
R&D投資の減少は技術力の喪失を意味し、設備投資の減少は生産性の低下を意味します。
また、人件費抑制や雇用調整は実質賃金の低下をまねき総体的な国民の貧困化につがなります。
企業は投資せず、実質賃金を減らされた国民は消費を減らすのですから、さらに総需要(投資+消費)が不足してデフレが加速するのも当然です。
要するにデフレとは、国家の死に至る病なのでございます。
世界をみまわしても、このデフレという異常な低血糖経済を20年以上も続けている国は日本だけです。
とはいえ、低血糖にも正しい処方箋があるようにデフレにも正しい処方箋があります。
にもかかわらず、歴代内閣は正しい処方箋を無視し続け我が国を発展途上国化という死に至らしめようとしています。
デフレを脱却させるための正しい処方箋の妨げとなっているのが、いわゆる「プライマリーバランス(基礎的財政収支、以下PB)の黒字化目標」です。
性懲りもなく菅内閣は9日に公表した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の中で、2025年度のPB黒字化の目標年度を今年度中に再確認することを明記しています。
上のグラフのとおり、2025年度までに政府のPBを黒字化するとなると、小泉・安倍緊縮よりもさらに過激な緊縮財政が行われることになります。
想像するだけで恐ろしい緊縮です。
その影響は川崎市など地方自治体の財政運営にも及びます。
例えば、川崎市の歳入は概ね、①市税収入、②地方債発行、③国や県からの使いみちを指定された支出金によって構成されていますが、政府が緊縮財政を行うことで市内GDPが縮小することから市税収入は減るとともに、国からの支出金も抑制されるために国庫によって補助されている各種事業を拡大することができません。
自治体が行う多くの事業は国(中央政府)からの補助によって成り立っています。
仮に川崎市が地方交付税交付金の交付団体になったとしても、デフレによって国全体のGDPが圧縮される以上、地方交付税交付金の原資も減っていくことになりますので、結果として本市は臨財債を発行するなどして対応しなければなりません。
PB黒字化目標があるかぎり、政府は地方交付税交付金の原資不足を国債発行で賄うこともできないでしょう。
川崎市をはじめ全国の地方自治体もまた企業や家計と同様に貨幣の利用者であることから、頼みの国(中央政府)に緊縮財政を行われてしまうと何もできないのでございます。
なお、デフレが続くかぎり、多くの自治体が「財政の厳しさ」を訴え行政サービスを縮小せざるを得ず、ときに〇〇維新の会みたいなのが現れ、一層の構造改革(小さな政府化)を進めます。
むろん、小さな政府化は行政を危機に対して脆弱な組織と化し、益々もって国民を不幸にします。
このようにPB黒字化目標がデフレを助長し自治体の手足を縛り、国民を貧しくし国力を衰退さています。
これを破棄させる政治集団、及びそれを支持する有権者層が求められています。