日本の穀物自給率は28%

日本の穀物自給率は28%

食料の確保は、軍事やエネルギーと並ぶ安全保障の要諦です。

ご承知のとおり、世界の食料価格はコロナ禍、異常気象、ウクライナ戦争などによる供給網の混乱により高騰が続いています。

そうしたことを背景に多くの国々が保護主義的姿勢を強めていますが、各国の食料安全保障に関わる問題ですので当然といえば当然の話です。

さて、農林水産省はわが国の食料自給率について、①生産額ベース、②カロリーベース、の二つの指標を発表しています。

①生産額ベースの食料自給率とは、「額」とあるように金額でみた自給率のことで、国内生産額から輸入額を差し引くことで求められます。

金額でみているため、例えば国内で生産される農産物の価格が引き上げられるだけで生産額ベースの自給率は上昇することになります。

一方、②カロリーベースの食料自給率は基礎的な栄養価であるエネルギー、即ちカロリーに着目して国民に供給される総カロリーに対する国内生産の割合を示す指標になります。

ただし、カロリーベースの自給率については、畜産物のうち、輸入した飼料によって国内生産されたものについては「国産」には含まず、例えば、アメリカから輸入した配合飼料で育てられている畜産物は国産とされていません。

それもそのはずで、もしも外国からの飼料輸入が滞ってしまえば、国内での生産が不可能になってしまうためにカロリーベースの統計からは除外されているわけです。

そこで、わが国の生産額ベース自給率をみますと67%となっており、そこそこに高いのですが、カロリーベースとなると37%にまで落ち込んでしまいます。

つまり、もしも外国からの食料関連品の輸入品が途絶してしまうと、日本国民の摂取可能なカロリーは4割弱にまで落ち込んでしまうことになります。

また、食料自給率をみる際には品目別に注目する必要があります。

例えば、わが国のおコメの自給率は97%となっておりほぼ100%に近いのですが、これはおコメの生産量が増えているためではなく需要が減っているためです。

日本人が次第におコメを食べなくなっています。

その一方、小麦などのおコメ以外の穀物を食べる量が増えているわけですが、例えば小麦の自給率は15%に過ぎません。

なので、わが国の場合、主食用穀物の自給率は60%にまで下がってしまうことになります。

加えて、畜産物のエサである配合飼料を合わせますと、実はわが国の穀物自給率は上のグラフのとおり、わずか28%にまで落ち込んでしまうのでございます。

日本よりも穀物自給率が低い主要国はオランダくらいです。

あるいは、わが国の野菜の自給率は80%と比較的に高いのですが、これまた日本で生産される野菜の種の9割は外国産です。

その理由を農林水産省は「その方が安あがりだから…」と舐めた説明をしています。

何らかの事情で種の輸入が途絶えてしまったら、いったいどうする気なのでしょうか。

既にポイント・オブ・ノーリターン(引き返し不能点)に達している感がありますが、それでも私たち日本国民一人ひとりが「食料問題は安全保障問題である」という認識に立ち、選挙で選ばれる政治家たちの意識改革を加速させねばなりません。