きのう、財政制度審議会(以下、財制審)の榊原会長が『2023年度予算の編成等に関する建議(意見書)』を鈴木俊一財務相に提出しました。
因みに、財政審は法的根拠(財務省設置法第七条第一項)をもつ財務大臣の諮問機関です。
その建議の中身をみますと、それはそれは酷いものです。
要するに「入りを量りて出るを制す」(量入制出)というやつです。
例えば地方行政に関する歳出についての建議は、これまでコロナ禍対応で支出されてきた『臨時交付金」』について、「事業効果等の公表促進やウィズコロナへ移行する中での縮減・廃止が必要だ」と言っています。
緊急事態対応への支出にまで費用対効果を求める浅はかさ…
なお、例によって防衛費についても「安易に国債発行に依存するな…」「これまでの延長線上でない歳出・歳入の財源措置が必要…」「費用対効果を踏まえた装備品の選定が必要…」とあり、また中小企業対策についても「コロナ禍での手厚い支援の量的縮減と事後的検証が必要…」などとしています。
もともと手厚くもない支援を「そろそろ縮減しろ…」、しかも「それが適正だったかを検証しろ…」などと、まるで弱者にムチ打つような各論が列記されています
ほんと、この人たち(財政制度審議会委員たち)は鬼ですね。
むろん、それらの政策(量入制出)が現在の状況下のなかで正しい効果を得られるのであれば異を唱える気などありませんが、どうみても明らかに間違っています。
ご承知のとおり、コロナ禍による経済的疲弊のみならず、今年はロシアによるウクライナ侵攻という世界を一変させる大事件が起きました。
防衛費の大幅増、食料やエネルギーの安全保障の強化、スタグフレーション(コストプッシュ・インフレ)対策等々、早急に着手しなければならない課題が山積しています。
要するに、今こそ経済財政政策の大転換が求められているわけです。
にもかかわらず、未だに「入るを量って出るを制する」という財政収支の縮小均衡政策にとらわれているのですから愚かとしか言いようがない。
報道するメディアもメディアで「歳出を増やすなら、その裏付けとなる財源を示さなければ無責任ではないか…」などと、財務省や財政制度審議会に媚びへつらって増税ありきの財源論をまくしたてる。
なるほど、ならば堂々と財源とやらを示してやろうじゃないか!
財源とは「貨幣」のことです。
増税派が言う「財源論」は、政府が課税によって民間が保有している貨幣(円)を徴収して財源にすべきだ、というものでしょう。
しかしながら、この論には大きな矛盾があります。
まず考えてみてほしい。
もともと民間が保有している貨幣(円)はどこから来たのでしょうか?
ボウフラのように、いつのまにかどこかからか湧いて出てきたわけでもあるまい。
もしかすると彼ら彼女ら増税派は、本当にボウフラのようにどこかからか湧き出てきたと思っているのかもしれない。
そんなわけはない。
実は、民間が保有している貨幣(円)は、政府が国債を発行することで供給してきたものです。
ならば自ら貨幣(円)を発行できる政府が、どうして民間から徴収しなければならないのでしょうか。
自ら発行して財源に充てればいいだけの話です。
詰まるところ、財政制度審議会の委員たちは誰一人として「貨幣とは何か」を理解していないということです。