我が国では、生産年齢人口(15〜64歳人口)比率が低下しています。
川崎市を含め多くの自治体は、高齢者を支える働き手が減少することを憂慮して様々な施策を展開しています。
例えば北九州市は、平成23年に公布・施行された法律(歯科口腔保健の推進に関する法律)に基づいて『口腔保健支援センター』を設置しています。
口腔衛生を保つことは健康維持に役立つことはもちろん、とりわけ高齢者の認知症対策としても効果的であることが知られているからです。
また同市は歯科医師、歯科衛生士と協力連携して「歯科と生活習慣病対策検討委員会」を立ち上げ、「歯科保健指導マニュアル」を策定するなどして歯周病予防事業にも力を入れています。
歯周病は、脳卒中、糖尿病を引き起こしやすいとも言われているからです。
あるいは福岡市では、働くことを望んでいる高齢者を支援するための「就業支援事業」に力を入れています。
当該事業は高齢者と企業の多様な雇用をマッチングさせることを眼目においているのですが、同市は福岡労働局(国の機関)との連携事業である『シニア・ハローワーク』を活用したマッチング事業を行っています。
因みに、こうした連携事業は全国でも福岡市と北九州市の2箇所しかありません。
福岡市としては、就職を望む高齢者に働いてもらうことで生産年齢比率の低下の穴埋めしようとしているわけですが、高齢者の就業意欲は高い一方、なかなか高齢者自身が希望する仕事が見つかりづらいのが実状のようです。
要するに川崎市もそうですが、通貨発行権をもたない地方自治体としては生産年齢人口比率の低下(=高齢化)が進めば進むほどに財政状況を圧迫するという恐怖観念に縛られているわけです。
しかしながら、生産年齢人口の不足は一人当たりの生産性(所得)向上をはかる絶好のチャンスであることをいずれの自治体も認識すべきです。
そして生産年齢人口減少社会において、一人当たりの生産性を着実に向上させるのに不可欠なものこそ、盤石なインフラストラクチャーです。
そのことを証明し、かつ大いに参考となりえる国がドイツです。
ドイツ人の平均休日数は150日で、EU諸国の中でも一人当たりの平均年間労働時間は1,397時間と最も少ない。
有給休暇取得日数をみても日本が15日なのに対し、ドイツは27日もあります。
人口及び国土面積で比較すると、日本が127000万人/37.8万㎢であるのに対しドイツは8200万人/35.7万㎢なのですが、高速道路整備延長は日本が8,333㎞であるのに対しドイツは12,879㎞もあります。
高速道路の車線を比較しても、ドイツでは6車線以上の高速道路が33.3%を占めているのに、日本では6%しかありません。
一方、ドイツの鉄道延長42,000㎞であるのに対して日本はJRと私鉄を合わせても23,500㎞しかありません。
ドイツの国家としての産業競争力の高さ、あるいはEU諸国で独り勝ちするほどの圧倒的競争力の根源はこうした交通インフラストラクチャーの充実にあったわけです。
それでも彼の国では「まだまだインフラの充実が必要だ」という認識にたち、公共投資を増やそうとしています。
ドイツには公共インフラの充実を「土建国家」呼ばわりして批判する無知なメディアも議員もいないのでしょう。
さて、我が川崎市では、伊藤三郎市長、高橋清市長による30年にも及ぶ都市計画ゼロの「革新市政」が行われました。
結果、近隣都市に比べ圧倒的にインフラ整備が圧倒的に遅れています。
残念ながら川崎市は、脆弱なインフラのまま生産年齢人口減少社会に突入することになります。