劣勢に立たされたロシアがウクライナの電力インフラを破壊する戦略にでましたが、ゼレンスキー大統領はインフラを狙い撃ちするロシアの行為を「大量破壊兵器に等しい犯罪行為だ」と非難しつつ、国民に節電を呼びかけています。
WHO(世界保健機構)によれば、このままだと越冬で数百万人が命の危機にさらされるという。
それにしても、ウクライナ戦争なるものが極めて地政学的な問題であることを改めて痛感させられます。
ウクライナにはかつてロシアとウクライナ双方の起源とされるキエフ公国がありました。
その後、2世紀にも及ぶモンゴル帝国の支配(タタールの軛)を経てウクライナはポーランド領になりましたが、やがて東部が勃興してきたロシアに呑み込まれ、ロシア人が移住してきました。
そして19世紀後半には、ポーランドごと全ウクライナがロシア領となったわけです。
ウクライナとして独立したのは、ソビエト連邦が崩壊した1991年のことです。
ロシアとウクライナとその周辺には明確な自然国境がない上に、こうした複雑な歴史を経てきた地域なので民族分布と国境が一致しないわけです。
ウクライナ東部ではロシア系民族が多く、西部ではポーランドと同じカトリック教徒もいます。
しかしながら旧ソ連時代、ロシア語はウクライナ全域に浸透していったらしい。
もともとロシア語とウクライナ語は、同じ東スラブ語族なのでかなり近いのだと思います。
即ち、ロシア人とウクライナ人は同国人になるには差異があり過ぎるが、完全に他国人と思うには共通点が多すぎる、と言ったところなのでしょう。
こうした民族的、宗教的背景から、ロシアとの連携を望む東ウクライナと、EUやNATO加盟国をめざす西ウクライナが、中央を縦断するドニエプル川を挟んで対立していたわけです。
ロシアにとってウクライナが軍事的、地政学的に極めて重要なエリアであることは言うに及びませんが、また小麦の大産地(肥沃な黒土地帯)であるだけでなく、鉄鉱石も多く採れます。
ゆえにロシアはランドパワー大国として、できればウクライナ全土を取り戻しておきたいのでしょう。
一方、シーパワーの英米としては逆に、ウクライナを仇敵ロシアから切り離しNATOに加盟させたかったわけですが、今回の戦争がはじまる以前まではEU内でも例えばドイツはロシアと利害が一致することも多く、必ずしも「米英独仏 VS ロシア」という図式にはなりませんでした。
ところが、米国はウクライナを強引にNATOに引き入れようとしました。
むろん、ウクライナ側にもNATOに加盟したい意思があったのでしょうが、ウクライナをNATOに引き入れようとさえせず、ただただNATOとロシアの緩衝地帯にしておけば、今回のような事態にはならなかったであろうと思います。
なにしろプーチン大統領ご自身がそのように言っています。
どう考えてみても、プーチンに武力侵攻をさせたい「何かしらの力」が働いたとしか思えません。