輸入されるエネルギー価格と食料価格の上昇を主因として、我が国ではコストプッシュ・インフレが深刻化しています。
帝国データバンクの調査によりますと、食品価格については、7月ごろまでは毎月およそ1,500品目が値上げ対象となっており、8月と9月はそれぞれ約2,500品目弱、なんと10月には約6,700品目へと急激に跳ね上がり、10月末時点での値上げ済対象品目は1万9,765品目に達しています。
10月になって急に多くの食品会社が値上げした背景にいったい何があったのか、むろん私には知る由もありませんが、今やほぼ全ての食品価格が上がっているというわけです。
一方、上のグラフのとおり10月の消費者物価指数をみますと、食料価格よりもエネルギー価格の上昇が著しいことがわかります。
食料品や穀物類の上昇は対前年比で5〜8%増ですが、なんと電気代やガス代は対前年比で20%にも達しています。
このエネルギー価格の上昇が来年4月ごろには更に本格化するというのですから、そら恐ろしいことです。
即ち私たちは、いよいよこれから本格的なコストプッシュ・インフレに見舞われるのでございます。
ご承知のとおり、実質賃金は企業単体でみた場合、生産性の向上なしには絶対に上がりません。
そして生産性を向上させるには何よりも「需要」が必要なのですが、現在のような需要不足では投資などできない。
結果、生産性は低くなっていく…
現に、1998年以降にデフレに突入した我が国においては、企業は投資によって生産性を向上させる資本集約型ではなく、投資せずに安い労働力をかき集めて成長するというモデルに転換されてしまったのです。
この25年間、存分に実質賃金が引き下げられてきたわけですが、今後さらなる輸入物価の上昇とデフレの深刻化によって実質賃金の下落が本格化するわけです。
巷には「そうは言っても、そろそろ円安も落ち着くだろう…」などと楽観視している人たちもおられますが、直近の輸入物価指数をみますと、契約通貨ベース(円ベースではない)でも指数が上昇していることから、今後よほどの円高に転じない限り輸入物価の高騰はしばらく続きそうです。
また、無責任なTVコメンテーターは、ウクライナ戦争について「そろそろ出口戦略を考えないと…」などと発言していますが、極めて平和ボケ的な発言です。
劣勢に立たされるプーチン大統領に当該戦争を終息させる意思などさらさらなく、おそらくは後2〜3年は戦闘状態が継続するのではないでしょうか。
少なくとも、そのように判断したほうがいい。
それに、ウクライナ戦争が終結したからといって、エネルギー価格や食料価格が直ちに従来価格に戻るわけでもありません。
我が国は粛々と食料自給率を高め、エネルギーに関わる技術やインフラへのたゆまない投資を怠らないことです。
そのためのおカネを惜しんではならない。
財政破綻論、税収財源論との闘いは続く…