迫りくる、さらなるコストプッシュ・インフレ

迫りくる、さらなるコストプッシュ・インフレ

ことし4月に物価上昇が本格化して以降、我が国の実質賃金はマイナスで推移しています。

上のグラフの9月は速報値ですが、先週発表された10月の消費者物価指数をみますとまたさらに上がっているようですので、10月の実質賃金は確実に下がります。

おそらくは最近の下落率を大幅に上回るかたちでの下落となることが予測されます。

とりわけ消費者物価指数は「総合指数」と「コアコアCPI(総合指数から生鮮食品とエネルギーを除いた指数)」の乖離が著しい。

もちろんコアコアCPIのほうが圧倒的に低い。

総合指数とコアコアCPIの差がここまで乖離したのは、2008年の資源バブル以来です。

あのときもコアコアCPIの伸び率はゼロ%だったのですが、食料価格とエネルギー価格が上昇したために総合指数との乖離が拡大しました。

たしか2%強程度の乖離だと記憶していますが、今回はさらにそれを上回っています。

以上のことからも、我が国の物価上昇の主因は明らかです。

むろん、外国から輸入している食料やエネルギーの価格が上昇しているからです。

さて、輸入小麦については、政府が「政府売渡価格」ということで価格を決めているのをご存知でしょうか。

毎年、4月と10月に、年に2回改定されています。

今年の売渡価格は4月の時点で17%も上がっていましたので、この10月の改定で「さらに上がってしまうのでは…」と戦々恐々としていたのですが据え置きということになりました。

据え置きに至った経緯は次のとおりです。

これまで、例えば4月の改定は、前年の10月からその年の3月までの輸入小麦の価格をみて改定し、10月の改定はその年の4月から9月までの価格をみて改定していました。

即ち、半年間の価格推移をみて政府売渡価格を決定してきたわけです。

ところが、そうしたやりかたでは「さすがにまずいぞ…」ということで、算定の対象期間をこれまでの半年から1年に伸ばしたようです。

なるほど、姑息といえば姑息ですが、農林水産省としても苦肉の策だったのでしょう。

これまでの算定方法どおりに改定すれば、今回の改定で売渡価格をだいぶ上げざるを得なかったでしょうから。

というものの、来年4月の改定では売渡価格が着実に跳ね上がってしまうことになります。

これからの半年間でさらに輸入小麦の価格は上昇するでしょうから。

それに、実は電気料金の引き上げも来年4月に本格的に引き上げられることになっていますので、それを踏まえますと家計にもたらす影響は極めて甚大です。

コストプッシュインフレの恐ろしさを痛感します。

政府が財政支出を拡大し、家計や企業に対するコストプッシュ・インフレ対策を行わないとまた死人がでることになります。

なのに、インフレを理由にして政府財政の支出抑制を主張している政治家、役人、マスコミ、学者、TV番組のコメンテーターたちが大勢います。

この種の人たちに、まずはインフレ率には二種類あることから説明しなければならないから実に厄介です。