集団安保と集団的自衛権は似て非なるもの

集団安保と集団的自衛権は似て非なるもの

NATO加盟国のポーランドにミサイルが着弾し2人が死亡しましたが、ミサイルはロシアによるものではなかったらしい。

どうやら、ウクライナが発射した迎撃ミサイルの誤爆だった可能性が濃厚のようです。

バイデン大統領も「ロシアから発射された可能性は低い」と発言していることから、おそらくそうなのでしょう。

米国はミサイルの軌道を把握できる能力をもっているらしいので、バイデン大統領は早い段階でその情報を得ていたのかもしれません。

とにもかくにも、これで偶発的な戦争拡大(全面戦争)は回避されそうです。

オランダの首相が「ロシアによるミサイルではないにしても、そもそもロシアがウクライナに侵攻しなければこのような事態には至っていない」と言っていますが、それを言うのであれば、そもそもウクライナをNATOに加盟させようとしなければロシアだって侵攻などしなかったのではないでしょうか。

また、今回の報道で最も不可解なことがあります。

それは「もしも今回の着弾がロシアによるものだったのなら、NATOの集団的自衛権が発動される可能性も否定できない事態だ…」という報道です。

報道というか解説ですね。

メディア関係者の多くが「集団的自衛権」について正しく理解していないのではないでしょうか。

個別的であれ、集団的であれ、自衛権を行使するためには以下3つの条件を満たしていることが必要です。

1.急迫不正の攻撃を受けていること

2.他に適当な手段がないこと

3.必要限度内の反撃であること

これらの条件を満たすと同時に、そもそも自衛権行使は集団安全保障に基づく「軍事的措置」が発動されるまでの間に許された緊急的な措置に過ぎません。

誤爆なのか、それとも意図的な攻撃なのかも判別できないような状況ですから、例えミサイルが着弾したとはいえ急迫不正の攻撃とは言い難い。

NATOは「集団的自衛権」の条約機構ではなく、あくまでも「集団安全保障」(集団防衛)の条約機構です。

おそらくメディア関係者の多くが「集団的自衛権」と「集団安全保障」の解釈がごっちゃになっているのだと思います。

ぜひとも「集団防衛」と「集団的自衛権」は似て非なるものであることを理解してほしい。

繰り返しますが、集団安保による軍事的措置が機能するまでの間の緊急措置として行使できるのが(集団的)自衛権なのです。

結局、こうした理解がないから「台湾有事への対応も集団的自衛権で…」という、これまた誤った解釈が世に蔓延ってしまうのだと思います。

それからここが大事なところですが、個別でも集団でも「自衛権」は権利の行使ですが、集団安保による軍事的措置への参加は権利の行使ではなく責務の遂行です。