東日本大震災陰謀論

東日本大震災陰謀論

全国の消費生活センターには、占いのサイトやアプリに関しての相談が年間1,000件以上は寄せられているらしい。

2019年度以降は、特に増加しているとのことです。

その相談事例をみますと、例えば…

「必ず宝くじの高額当選に導く…」と言われたが、いつまで経っても結果が出ない。

無料鑑定で三つの「徳」を授けてもらえると言われたが、無料鑑定期間を過ぎても最後の一つを授かることができず、高額なお金を支払ってしまった。

…等々です。

人間ですから、ときに判断能力が低下することもあるでしょう。

にしても…

悪徳占いやカルト宗教に洗脳されてしまう人たちが絶えない一方、陰謀論に迷い込んでしまわれる人々も少なからずおられます。

2011年3月11日の東日本大震災(三陸沖で発生した巨大地震)が「実は人工地震だった…」という陰謀論があるのをご存知でしょうか。

因みに、なぜかこの種の人たちはワクチンや5G等々の流行りの話題をテーマに持論を展開することが多いのですが、本日はせっかくなので「東日本大震災の人工地震説」について検証してみたいと思います。

まず、3・11地震はともかく、人間の活動によって地震が誘発されることがあるのは事実であり、それほど珍しいものではありません。

人工地震には概ね2種類あります。

一つは爆発などで直接地面を揺らすケース、もう一つは人間の活動により地球の内部で何らかの変化が生じ、それが原因となって地震を引き起こすケースです。

当然のことながら、直接地面を揺らすほうが必要なエネルギーが多くなります。

意外にも人工地震の数は多く、2022年現在で有力な証拠があるものだけでも1,000件以上もの人工地震が記録されています。

その多くはマグニチュード2〜4程度の小さな地震ですが、中にはマグニチュード7を超え、実際に被害が発生した事例も存在します。

例えば、2017年に北朝鮮が地下での核実験を実施した際には、マグニチュード6.3相当の地震が発生し、近くの村で数十人の死傷者が発生したと報道されています。

マグニチュード6.3の地震のエネルギーは、TNT火薬換算で約4万2,500トンです。

現代の核爆弾の総エネルギーはその数倍から数十倍にもなることがあり、エネルギーだけをみれば核爆弾は地震を引き起こすのに十分な破壊力を持っていることになります。

事実、核爆弾は人間が直接的に地震を引き起こす代表的な例となります。

とはいえ、核爆弾による地震と比べると、人類が間接的に誘発した人工地震の方がはるかに件数が多いものになります。

例えば、米国の中部では、2010年以降、地震の数が急激に増加していることが明らかになっていますが、これはシェールオイルと呼ばれる石油採掘の際、発生した排水を地中に戻すことがよく行われており、これが断層にある岩を滑らせ、地震を発生させていると考えられています。

最大の地震は、2016年にオクラホマ州で起きた地震で、マグニチュード5.8を記録しています。

あるいは2015年にネパールで発生したマグニチュード7.8の地震と、2008年に中国で発生したマグニチュード7.9の四川大地震も、ともに人間の活動が原因だと言われています。

前者は地下水の過剰な組み上げ、後者はダムの建設により地殻の受けるストレスが変化したと推定する研究が存在しており、死者はそれぞれ約9,000人と約8万8,000人で両方とも甚大な被害を被っています。

故意ではないにせよ、その地域に住む人たちにとっては自分で自分の首を締める結果となってしまいました。

ただし、これらの事例は、あくまでも地震の周期をずらしただけの話に過ぎません。

例えば、四川大地震においては、人間の活動によって数十年から数百年先の地震を引き起こしたと推定されており、これは即ちダムの建設があろうがなかろうが数十年後には大地震が発生していた可能性があるということです。

逆に言えば、周囲を避難させた上で人工的に小規模の地震を引き起こし、地中のひずみを解消することで地震の被害を極力小さく抑えることも理論上は可能であり、水を地中に注入することでそれを実現する方法を提案している研究者も現に存在しています。

人工地震の研究が進むことで、やがては地震被害に悩む必要がなくなる可能性も否定できません。

とは言っても、むろん現在の技術において人工地震は制御できるものでは全くありません。

さてそのうえで、もしも日本史上に残る巨大地震たる『東日本大震災』が人工的に引き起こされたものであったなら、どのような事態になるのでしょうか。

まずは人為的に地面を揺らして地震を発生させた場合ですが、東日本大震災での地震のマグニチュードは9.0〜9.1です。

地震のエネルギーはマグニチュードが2上昇すると1,000倍になることから、東日本大震災のエネルギーはTNT火薬換算で最大約670メガトンになります。

世界最大の核爆弾はツァーリ・ボンバの50メガトンですが、それでさえ輸送などの扱いが非常に難しいことは周知のとおりです。

核爆弾のエネルギーのうち、地面を揺らすことに使われる割合はごく一部だということを考えますと、ツァーリ・ボンバ数十個分の核爆弾が三陸沖で一斉に爆発したことになります。

そんなバカな…

それほどの核爆弾が世界中の人々に全く気づかれずに輸送できたとしても、東日本大震災の挙動を再現するのは困難を極めることになります。

まずは「揺れ」の問題です。

中学生時代に習った記憶がありますが、地震の揺れにはP波とS波があります。

P波は縦波と表現され、岩の圧縮された部分が周囲に伝わり、S波は横波と表現され、岩が上下左右に移動する動きが周囲に伝わります。

そして自然発生した地震にはP波とS波が存在しますが、一般的に爆発により発生した地震にはP波のみが観測されます。

ってことは、もし3・11地震が核爆弾による衝撃波から発生したと仮定しますと、自然発生した地震と偽装できるように、何らかの形で横方向の波も発生させたということになります。

ただの核爆弾ではなく、核爆弾が爆発している最中に周囲の岩が揺れる方向を変えることが必要になりますが、現状の人類はそのような技術を有していないことは私のようなド素人でも容易に想像がつきます。

さらには、3・11地震は1回で終わりではなく、その前後に前震や余震が合わせて900回程度も発生しています。

そのほとんどは小さな地震ですが、マグニチュード6以上のものが60回程度もあります。

マグニチュード6の地震のエネルギーはTNT火薬換算でおよそ1万5,000トンですので、広島型原爆と同程度であることから、規模は本震よりも小さいものの数十回は似たような作業を敢行したことになりますね。

仮にではありますが、専門家にでも全く想像できないような技術が存在し、大規模な作戦を実行できるだけの組織力をもっていた場合、わざわざ地震という回りくどい手段を採る必要性はどこにあるのでしょうか。

なお、3・11地震が直接人間が引き起こしたものではなく、間接的に発生した地震だったと仮設しても、似たような問題にぶつかります。

2011年以前は、三陸沖においてはせいぜいマグニチュード7.5程度の地震しか発生しないだろうと多くの地震学者は考えていましたし、あるいは地中でどのような作業を行えばどのような変化が生まれるのか、そしてそれが発生する地震にどのようなに影響するのかについても今はまだよくわかっていません。

そのように世界中の科学者たちが血眼になって研究を進めているなかで、ある特定の組織のみが真実にたどり着き、さらに誰にも見つからず大規模な作戦を遂行できるという説は、非常に不自然だと言わざるを得ません。

詰まるところ、人知を超えたものを理性や合理で裁断することの愚かさを知るのが保守、あるいは大人というものです。