一部報道により「ロシア軍がウクライナ南部ヘルソン州で撤退の動きを見せている…」との観測が取り沙汰されていましたが、ウクライナ政府中枢は懐疑的な見方をしているようです。
レズニコフ国防相(ウクライナ)は「罠の可能性があり、全ての情報を慎重に調べている」と声明を出しています。
このあたりは情報戦のせめぎ合いでもあるのでしょう。
いずれにしても、依然としてウクライナ危機は出口がみえません。
一方、ウクライナ危機でLNG調達の不透明感が増しているなか、東京ガスと大手商社である丸紅がベトナムに天然ガス火力発電所を建設すると発表しました。
2027年後半までに当該発電所を稼働させる見込みで、同時に年間100万トンの液化天然ガス(LNG)を受け入れる基地も整備する予定で、非常時には日本にLNGを振り向けるとのことです。
アジアに拠点をもつことで我が国への安定供給につなげるのが事業目的らしい。
因みに見込まれている総事業費は、2000億円規模とのこと。
現今世界は、伝統的な地政学の最悪の側面とも言える大国間競争や資源争奪戦が繰り広げられている一方で、気候変動、パンデミック、食糧危機等々、現代を特徴づける複雑で新しい課題が山積しています。
その点、新旧の脅威が交錯していると言っていい。
とりわけ、地政学的な競争激化が地球規模の新たな問題に関する国際協調をさらに困難にしており、国際環境の悪化がまた地政学的緊張をさらに高めるという「負のスパイラル」に入り込んでいるのではないでしょうか。
欧州やインド太平洋地域においても共に大国間競争リスクが高まりをみせているなか、あるいはイランが中東を不安定化させるリスクを拡大させる可能性すらあります。
世界秩序の急激な衰退期に直面していると言ったら、言い過ぎでしょうか。
しかしながら少なくとも、これまで国際社会を主導する意欲と能力を有してきた米国の退潮が、世界秩序の急激な変化に派生していることは確かです。
例えば、覇権国の利上げ政策が世界経済にもたらす影響は計り知れません。
むろん我が国も大きな打撃を受けていますが、外債に依存している新興国にとってはもっと深刻です。
現に上のグラフのとおり、新興国による米ドルなど外貨建て債券発行に急激なブレーキがかかっています。(米ドル以外の外債についても世界的なコストプッシュ・インフレで金利が上昇)
新興国が今年上半期に海外で発行した債券は4552億ドル(約67兆円)でしたが、上半期は同時に債券償還の額の方が多くなりました。
即ち、このことは新興国内の外貨が減ったことを意味します。
もしもこのまま債券市場で資金を調達できない状態が続けば、やがて来年には資金不足に陥る新興国が増えることになります。
新興国のデフォルト(債務不履行)、あるいはIMFによる支援拡大は再び金融市場の火種となり、世界経済を不安定化させることになります。
例えば、去る10月にIMFと30億ドルの金融支援で合意しているエジプトでは、燃料や食糧の高騰によりインフレが起きており、外貨流出が続いています。
外貨建て債の発行が重要な資金調達手段である新興国にとって、発行額の急減は深刻な経済的打撃です。
こうしたことがまた地政学リスクを高める要因となるわけです。
世界の不確実性は高まるばかりです。