本日、午前3時半すぎ(日本時間)、パウエルFRB議長がFOMC後の記者会見を開きました。
FOMC(米連邦公開市場委員会)とは、米国の金融政策を決定する会議のことです。
会議の結果については、その都度、FRB議長が記者会見を開いて発表することになっています。
FRB議長の発言は、当然のことながらマーケットに大きな影響を与えます。
今回のFOMCでもまた「利上げ」が決定されました。
利上げ幅は「年3.45%〜4.0%」で、0.75%の上昇ということになります。
1回の利上げとしては通常の3倍の上げ幅です。
それに、0.75ポイントの利上げは4会合連続であり、4%台は2008年1月以来のこととなることから、さっそくマーケットが反応しているようです。
会見をはじめたパウエル議長は、今後の利上げペースについて「金融政策が経済活動やインフレに影響を及ぼすのに時間差があることを考慮する」と発言したことから、マーケットは「議長の発言は、今後の利上げ幅の圧縮を示唆するものだ」と受け止めたようです。
ゆえに「日米の金利差がこれまでのようには拡大しない…」というマーケットの観測から、円相場は一時、1ドル=145円台後半まで値上がりしています。
と同時に、パウエル議長は「継続的な利上げが必要だ」などとも発言したことから、再び円を売る動きが強まり、円相場は一時、1ドル=147円台後半まで値下がりしました。
まさに乱高下の展開です。
それにしても、また利上げ。
これほどの金融引き締め政策は、囲碁用語でいえば「悪手」と言わざるを得ません。
なによりもFRBがインフレ要因をきちんと分類していないことが大問題です。
いつも言うようにインフレには、拡大した需要が供給能力を上回ることで発生する「デマンドプル・インフレ」と、供給能力が何らかの要因で制約されることで発生する「コストプッシュ・インフレ」の2種類があります。
この分類は極めて重要です。
なぜなら同じインフレでも、それぞれに対策が大きく異なるからです。
前者(デマンドプル)の対策は、原則として「需要の抑制策」が必要となりますので、具体的には財政支出を抑制すること、金融を引き締めて景気を冷やすことが求められます。
後者(コストプッシュ)の対策は、何らかの要因により供給能力が低下することによって発生していることから、供給能力を強化することがその対策の基本となります。
とはいえ、供給能力の強化と言っても、強化されるまでには相当の時間を要しますので、コストプッシュ・インフレ対策は極めて複雑なものとなります。
コストプッシュ・インフレ下において絶対にやってはならないことは、供給制約に合わせて需要を抑制させることです。
たしかにインフレ自体は理論的には抑制されますが、それには不況や失業の増大という副作用を伴います。
インフレ抑制のために雇用や国民生活を犠牲にするというのは本末転倒です。
要するに、コストプッシュ・インフレ対策は例え困難であっても、供給能力を強化するための「産業政策」を断行するほかないのでございます。
年初のインフレはデマンドプル・インフレだったかもしれませんが、現在の米国経済に襲いかかっているインフレは、サンフランシスコ連銀が示しているとおりコストプッシュ・インフレです。
ゆえに、その対策としては米国企業の供給能力を引き上げねばなりません。
企業が供給能力を引き上げるためには、企業自身が技術開発投資や設備投資や人材投資等々、各種の投資が必要になってくるわけですが、残念ながら中央銀行(FRB)による「利上げ政策」は、こうした企業活動を妨げることになります。
そのことは「FRBの利上げが悪手である…」と言い切れる一つの理由です。