医療計画上の矛盾

医療計画上の矛盾

きのう、大阪市住吉区にある『大阪急性期・総合医療センター』という総合病院がサイバー攻撃を受けました。

サイバー攻撃にもいくつかの種類があるようですが、今回は身代金要求型のコンピューターウイルスを使った、いわゆるランサムウエアによる攻撃だったらしい。

この攻撃により電子カルテのシステム障害が発生し、未だシステムが復旧する見通しが立っていません。

現在、救急以外の診療・診察等ほとんどの医療行為が停止している状態で、患者600〜千人に影響が及んでいるとのこと。

ただ、当該病院は865床の病床をもつ大病院ですが、これまでのところ入院患者への影響はないとのことです。

病院は国民生活に欠かすことのできない安全保障施設です。

デジタル化時代とは、こうした安全保障に関わる施設に対するサイバー攻撃への備えを特に強化しなければならない時代です。

さて、私の住む川崎市多摩区は、医療計画上、「川崎北部医療圏」に属し、人口あたりの療養病床が極端に少ない地域です。

そのことが、この地域に住む高齢患者の地元病院への入院を困難にしています。

現在は少し改善されていますが、つい数年前まで、なんとこの地域の入院患者のうち、31.5%が市外居住者となっていた時期がありました。

要するに、多摩区に住む患者の行き場を狭めてきたわけです。

因みに私は、療養病床の少なさが救急搬送の際の現場滞在時間をいたずらに長くしていたことを議会で指摘し、それを改善するために『重症患者救急対応病院』を創設してもらうに至り、救急車で病院に運ばれるまでの待機時間は劇的に改善されました。

ただ、本市の地域医療にはまだまだ多くの課題が山積しています。

例えば本市は『神奈川県保険医療計画』の上では基準病床に対して791床が余剰であるとされている一方、病床の利用率が近隣の医療圏に比べて低くなっています。

即ち、机上論では「病床が余剰」と判断されながら、現実には入院したいのに病床が足りない…、なのに利用されていない病床が多い…、という奇妙な現象が起きています。

このことは医療政策上の大きな矛盾です。

その要因は、他の医療圏からの流入患者を含めた医療受給のミスマッチにあるのだろうと思われます。

コロナ・パンデミックにより、さすがに病床削減圧力は弱まりましたが、ほとぼりが冷めれば再び緊縮財政至上主義の財務省が中心となって「病床を減らせ」という声が高まってくるにちがいありません。

しかしながら、いつも言うように「病床」は国民の医療安全保障を支えるための貴重な公共財です。

これ以上の削減は、国民福利の向上に反します。

「医療の効率化」や「財政再建」を理由にした病床削減には、断固として異を唱えていかねばなりません。