財務大臣の諮問機関である『財政制度等審議会』が無能ぶりを晒しています。
来年度(2023年度)の予算編成で最も注目されているのは「防衛予算の増額」ですが、10月28日に開催された分科会において、委員たちからは「(財源は)国民全体で広く負担するのが基本」として増税を軸に検討する必要があるとの意見が相次ぎました。
要するに彼らは「防衛増税」を推進しているわけです。
「税収は財源ではない!」という基本を理解していない連中に財政について論じさせるとこうなってしまうのです。
いつも言うように、政府が税金を徴収する目的は、①インフレ率の調整、②景気循環の調整、③所得格差の調整、④炭素税など何らかの政策目的を果たすための課税、⑤租税貨幣論(自国通貨の国定化)にあります。
租税貨幣論についての説明はここでは省略をさせて頂きますが、兎にも角にも徴税に「財源確保」という目的などないのでございます。
中央政府であれ、地方政府であれ同様ですが、行政は「歳出」が先なのであって「歳入」は後となります。
その年の会計年度の歳出は、その年の会計年度の歳入をもって充てなければならないのですから、年度はじめには行政の財布にはおカネ(税収)はありません。
財布におカネはなくとも、年度はじめ4月1日から行政は支払いが発生します。
そのおカネはどこから調達するのか、むろん借り入れ(借金)です。
川崎市の予算書(第4条)に「一時借入金」として500億円が計上されているのはそのためです。
とにかく行政は「借金ありき」なのです。
とりわけ、通貨発行権を有している中央政府の場合、その借金は実施的に返済の必要がありません。
一応、帳簿上は返済しているように見せていますが、実際には「借り換え」の連続です。
むろん、それでいい。
国家財政とはそういうものなのでございます。
多くの国民が誤解されていますが、私たちが日常的に使っている「通貨」を発行しているのは日本銀行ではありません。
通貨を発行しているのは「政府」と「市中銀行」です。
通貨には「現金通貨」と「預金通貨」があります。
後者の「預金通貨」を発行しているのは、ご承知のとおり市中銀行です。
例えば、個人や企業が銀行からおカネを借りる(融資される)と、指定の口座(預金通帳)に金額が記入されます。
これが市中銀行による貨幣発行です。
一方、紙幣には「日銀券」と記載されているとおり、現金通貨を発行しているのはたしかに日銀なのですが、このとき日銀は、政府が国債を発行してくれるからこそ日銀券を発行することができます。
実は現金通貨の担保は国債だったのです。
政府債務残高とは、それ即ち通貨発行残高である所以です。
なので、政府に対し「これ以上、借金をするなぁ〜」と言うことは、「これ以上、通貨を発行するなぁ〜」と言っているのと同じなのでございます。
断っておきますが、政府が国債を発行するとき、家計や企業などの民間貯蓄(預金)からおカネを借りているわけではありません。
これも多くの国民が誤解しているところです。
政府が日銀にもつ「当座預金」に、キーボードで数字が打ち込まれるだけ(キーボード・マネー)で、誰かの預金を又借りしているわけではないのです。
そして政府が財政支出することにより、世の中におカネ(通貨)が供給されます。
因みに、私たちが日常的に手にしている現金紙幣は、我々の資産である銀行預金を、日銀券に交換するという形で社会に流通しているわけです。
けっして現金紙幣を銀行預金にしているのではなく、まずは「銀行預金ありき」なのです。
要するに、①政府が借金をするか、②誰かが銀行から借金をするか、①②の手段のほかに通貨が発行されることはないのでございます。
逆に、政府が税収を徴収すること、あるいは誰かが銀行に借金を返済することにより、通貨は世の中から消滅します。
そして何度でも言います。
インフレ率が許す限りにおいて政府の通貨発行(国債発行)に上限などなく、まして国債は事実上、返済の必要がない借金です。
よって防衛増税なんてあり得ない。
財政制度等審議会の委員たちは、以上述べてきたことをおそらく知らないのだと思います。