私の選挙区(川崎市多摩区)である小田急線・生田駅近くにある交番が、来年度中に廃止されることになりました。
ご承知のとおり、交番の整備・維持については神奈川県(県警)の所管です。
市議会議員などには手の出しようがない問題なのですが、やはり交番の数が年々減っていく事態には憂いを感じざるを得ません。
近年、神奈川県は年間7〜8か所のペースで県内の交番を廃止しています。
2003年(平成15年)当時には631か所あった交番(交番486か所、駐在所143か所、警備派出所2か所)ですが、2018年(平成30年)には610か所となり、2030年には400か所程度にまで縮減させる計画です。
県警が交番を整理縮小する大義は次のとおりです。
①スマホの普及による通信網の発達や交通網の発達等、社会情勢の変化に伴い、配置人員や設置場所の見直しが必要
②築40年以上の老朽化交番が約2割もあり、ここ数年の建て替えは年2〜3か所となっているので、それらの整備強化が必要
③DVや特殊詐欺等への対策強化が求められ、交番勤務員の増員が困難な一方で、交番警察官の殺害事件が連続発生し、複数勤務体制の確立が必要となっている
(神奈川県警察交番等整備基本計画より)
もうお解り頂けるものと存じますが、要するに「おカネとヒトが足りないから、交番の数を減らします」と言っています。
つまりこうです。
「2018年時点で610か所の交番があり、その約2割(約200か所)が既に老朽化し建て替えが必要になっている。しかしながら、建て替えるおカネもないし、人員も不足しているから、建て替えずにそのまま廃止しちまって400か所体制にしちゃおう」ということです。
ですが…
県警が言っているように「交番警察官の殺害事件が連続発生し、複数勤務体制の確立」が急がれているご時世なのに、おカネがないからという理由で交番の数を減らしてしまって本当にいいのですか。
神奈川県議会でどのような議論が為されたのかわかりませんが、おそらく県警予算もマイナス・シーリングの対象になっているのでしょう。
マイナス・シーリングとは、予算編成にあたり財政当局から「おたくの部署は、来年度はどこそこの予算をどれだけカットできるのか額を示しなさい…」と要求されることです。
おカネが足りないのであれば、あるいはヒトが足りないのであれば、県債(地方債)を発行してでも交番を維持強化し、人員を増員するしかないでしょう。
医療でもそうでうすが、親や子供が大病を患っているのに「おカネがもったいないから診療させない」という家族などいるでしょうか。
とはいえ、この国の政治及び財務省は本気でそれをやってきたから怖い。
交番制度(かつては派出所)は、世界に誇ることのできる日本の治安維持システムだったといっていい。
子供のころに読んだ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』にも、そのように書いてあったのを記憶しています。
その数が減らされていくのは誠に残念です。
おカネの問題であるのなら、正直に「治安を強化するために予算を増やしてくれ…」と言えばいい。
それを県議会が後押しをし、知事は知事で全国知事会と協力して国(総務省・財務省)に対して財政措置を求めるべきです。
「スマホが普及したから…」などという怪しげな大義で交番を減らすようなことは止めてほしい。
詰まるところ、政治行政に携わる者たちが正しい貨幣観を持っていないがゆえに「小さな政府論」に陥ってしまうのでございます。