一国の経済力は、モノやサービスを生産できる能力で決定します。
その能力を外国に依存せず、できるだけ自前で生産できなければならない。
国内の需要を国内の供給能力のみで完結できる国があったのなら、それこそ究極の先進国です。
むろん世界中を探しても、そのような国は一つも存在しない。
さすがの米国でも不可能なことですが、その割合がもっとも高いのは間違いなく米国でしょう。
例えば、食料、エネルギー、防衛に関わるモノやサービスの安定供給を圧倒的に国内で確保しています。
その点、外国からの輸入に依存することなく経済社会を完結できていた江戸時代の日本は完璧な先進国だったといっていい。
ただ、幕末には欧米列強の襲来と圧力により、その圧倒的な軍事力の差から主権(国土・国民を含む)を護るための防衛サービスを自前で生産することができませんでした。
一気に先進国から発展途上国になってしまったわけです。
さて、食料安全保障の面において、我が国の自給率はカロリーベースで38%ですが、原材料や肥飼料などの調達の多くを外国からの輸入に依存しているため、実質的な自給率は一桁台になってしまうものと推察します。
カロリーベースでも我が国の自給率は国際的に低い水準であることを考慮すれば、我が国の食料安全保障がいかに脆弱であるのかを痛感せざるを得ません。
そうしたなか農水省の調査によれば、2021年の農作物の延べ作付面積が、田畑合計で前年比0.4%減の397万7000haとなり、過去最低を更新したことが明らかになりました。
ご承知のとおり、おコメの需要減を背景に、過去最大規模の作付け転換を求められた水稲で大幅に減らした模様です。
しかもこのままでは、来年(2023年)には経営規模5ha以下のコメ農家の全てが赤字経営になってしまう状態です。
経営規模5ha以下のコメ農家は、なんと全体の98%にも達し、その多くが廃業されてしまう可能性があります。
それに、5〜10ha規模のコメ農家でさえ、所得がわずか13万円程度になってしまうというとのことです。
儲からぬ農業を子や孫に受け継ごう、などと考える農家などそうはおられないと拝察します。
これらは、まちがいなく我が国の農業生産力の更なる低下を意味しています。
自給率ほぼ100%を維持してきたおコメでさえ、このような状況です。
この先、戦争、テロ、災害、天候不順、疫病、金融危機等々、新たなる世界的危機が発生して国際的な食料サプライチェーンが寸断されるようなことになれば、我が国はたちまちにして飢餓に晒されることになります。
安全保障上の戦略物資である食料生産を、自由マーケットなどに委ねているからこのような事態に陥ってしまうのです。
ここは速やかに政府は財政政策を講じ、コメ農家の採算に見合う金額で買い上げるべきです。
そうすることで、おコメの生産能力を維持強化するのです。
政府が買い上げたおコメは、例えば学校教育のすべての給食をおコメ中心に変えていけばいい。
あるいは米粉の開発に資源を集中し、小麦などの輸入依存を解消していけばいい。
それでも余剰生産がでるのなら、むろん危機に備えて備蓄すればいい。
それでも余るなら、発展途上国に無償で供給すればいい。
それが先進国というものです。