一昨日、与党(自民党・公明党)が防衛力強化をめぐる協議会を立ち上げました。
この協議会では、反撃能力の保有、サイバー防衛の強化、装備品の海外移転の規制、そして防衛費の増額等々が議論の対象となります。
とりわけ初会合では、防衛費の増額規模のほかに、防衛省が所管していない経済安全保障の分野も議論の対象とすることが確認されています。
協議会のメンバーをみますと、自民党から麻生副総裁、公明党からは北川副代表のほか、自公両党の幹事長や政調会長らが参加しています。
安全保障に関する与党協議に副総裁や党3役が入るのは2015年の安保法制以来ですが、あの時と異なるのは両党の政調会長が参加している点でしょうか。
党内で政策全般を担っている「政調会長」を入れることで、防衛以外の分野についても協議を円滑に調整できるようにする狙いがあるのだと拝察します。
ここで「防衛以外の分野…」と言っているのには、実は誠に残念な理由があります。
おそらくは米国からの強い要請もあってのことだと推察しますが、防衛省は防衛予算をGDP比2%台にまでもっていきたいわけです。
ところが例によって緊縮至上主義が行く手を阻んでおり、財務省はできるだけ予算をつけたくないわけです。
そこで政府としては、本来は国土交通省の所管である例えば海上保安庁の予算、あるいは総務省が所管する退職自衛官の恩給などまでをもGDP比2%の中にカウントしようとしています。
なんて姑息な。
さらに残念なことに、今回の協議会ではいわゆる「財源問題」が議題の中心に据えられそうなことです。
自民党内の一部には、防衛費増額分については国債発行で対応すべきだ、という意見もあるらしいのですが、公明党は増額分については税による負担を主張する見込みのようです。
公明党の山口那津男代表は18日の記者会見において早速、「恒久的な装備体系を支持する観点にたてば財源が必要であり、基本的に税に求めることになる」と発言しています。
しかも公明党内には「防衛費の増額そのものに一定の歯止めをかけるべきだ…」という意見すらあるようですが、我が国の防衛力の強化を望まない理由がどこにあるのか私にはわかりません。
さらに理解できないのは、防衛予算増額の原資を税収に求めている点です。
防衛予算に限らず、あらゆる財政支出の財源は税収ではありません。
上の図表のとおり、政府による財政支出の原資は基本的に「国債発行」です。
新規国債が発行されることで、新たな通貨が発行され、その通貨は財政支出によって国民経済に供給されます。
供給された通貨のうち過剰通貨分については、「徴税」と「納税」という手段を通じてこの世から消滅されることになります。
図表のベクトルの向きを見て頂ければわかるように、財政はあくまでも支出が先であって、徴税(納税)は後です。
そして徴税により過剰通貨は政府に回収され、国民経済から消滅するのです。
いいかげんに「財源は増税で…」みたいな、恥ずかしい財源論はお止め頂きたい。
財源論に陥ったら政治論は負けです。