中共、GDP目標公表せず

中共、GDP目標公表せず

中国では5年に一度の共産党大会が開かれています。

異例の3期目入りに不都合と判断したのか、習近平(しゅうきんぺい)総書記は16日の活動報告で成長の数値目標を示さなかったようです。

どうやら、この期間中にはGDP(国内総生産)など経済統計の公表を行わないらしい。

とはいえ、唐突な公表延期の余波はそれなりに大きいようで、例えば外国の経済界からも「中国は政治の都合を優先する国…」「中国への投資意欲が削がれる…」などの声が上がっています。(そんなことはとっくに解りきっていたことだと思うのですが…)

胡錦濤(こきんとう)前総書記は、12年前の共産党大会で「2020年のGDPを2010年比で2倍にする」ことを目標に掲げましたが、2020年の段階において、残念ながら習近平総書記はその目標を達成できておりません。

米中貿易戦争、新型コロナ、グローバル・サプライチェーンの滞り等々の影響もあって、今後も飛躍的な成長を見込めていないのが実状でしょう。

ただ、権威主義国家とはいえ政権内部の非主流派や人民世論から「数値目標を達成したかどうか…」の結果責任を厳しく問われるのでしょうから、習近平総書記としては何らかの代替目標を発表しなければならなかったようです。

そこで習近平総書記は、一人あたりのGDPを2035年までにイタリアやスペイン並み(米ドル換算で3万ドル前後)にするという曖昧な目標を提示しています。

中国の現在の一人あたりGDPは約1万2500ドルです。

これを2035年までに3万ドルにするとなると、名目で6%のGDP成長が前提となります。

けっこう、きつくないっすか?

なにせ2000年以降、中国経済が飛躍的かつ驚異的な経済成長を実現できたのは、米国が主導するグローバリズム経済の恩恵をそれこそご都合主義で享受してきたからです。

今や米国が主導するグローバリズム経済は存在せず、ましてや米国が中国経済を半ば封じ込めようとさえしています。

2年間に及ぶゼロコロナ政策は、感染が再び拡大するたびに移動制限を強化してきたこともあってサービス業などを中心に企業は先行き不透明感を拭えないようですし、そのことは若年失業率の高まりを招いているほか、人民の所得不安をも招いているという。

中国のGDPに占める個人消費の比率は日米などよりも低いとはいえ、それでも4割は占めていますので、ゼロコロナ政策をきっかけに拡大した不安が常態化すると長期にわたって経済成長の足かせとなりましょう。

また、日本とは異なり、地方債の発行を認められていない中国では、地方政府による開発投資に関わる債務問題も深刻化しているらしいから、おカネを預けていた(投資していた)人民らの不満の高まりは大きくなっていくことでしょう。

それに、そうした開発投資が地方政府幹部の出世にも関わる物差しとなってきたこともあって、彼の国では固定資産投資などの改竄も絶えないという。

人民の内なる不満が高まれば高まったで、習近平総書記は人民の目を外にむけねばならないと判断し、台湾侵攻を決断するかもしれません。

むろん台湾侵攻は、我が国にとっても無関係ではいられない重要な安全保障問題です。

詰まるところ、経済的に飛躍されても困るし、停滞されても困るという、彼の国は我が国にとって実に厄介な隣国なのでございます。