陸上自衛隊は10月1日から14日まで、日米同盟の抑止力と対処力を強化するため、上富良野、然別、矢臼別、静内などの演習場において米国海兵隊との実動訓練を行いました。
いわゆる『レゾリュート・ドラゴン22』です。
レゾリュート・ドラゴン22は、国内で米軍と実施される共同訓練としては最大級の演習です。
今回の共同訓練は、平成28年9月の日米合同委員会合意に基づく「MV-22オスプレイの訓練移転」が組み込まれ、離島防衛作戦での陸自の領域横断作戦(CDO)、米海兵隊の機動展開前進基地作戦(EABO)をともに踏まえた連携要領の具体化、要するに指揮機関の連携強化が目的とされています。
例えば矢臼別演習場で行われた共同訓練は、日米ともに別海町に常駐していない部隊同士の共同訓練でしたので、むろん機動部隊同士の訓練です。
なので、日米両軍ともに機動部隊が日本周辺のどこへでも互いに駆けつけ合体し「その戦力を発揮することが可能ですよ!」ということを内外に示すための機動訓練だったとも言えます。
あるいは、長射程火力の実射訓練こそが、今回の訓練の最大眼目であったのかもしれません。
現在、ウクライナ戦闘でウクライナ・ロシア両陸軍の長射程砲(例えばハイマースのような)が問題になっていますが、ここで日米両軍の長射程砲の実力を確かめ合う訓練であったのではないでしょうか。
我が国には長射程砲の実射が可能な演習場は矢臼別演習場以外にありませんので、その共同訓練場として矢臼別が選ばれたのだろうと推察いたします。
現に矢臼別演習場では、陸自による多連装型ロケットシステムMLRSの射撃訓練が行われています。
一方、米国海兵隊はウクライナに供与しているハイマースを投入する予定だったのですが、なんとハイマースの実弾が米国本土から届かず、実弾射撃が延期されたのは少しお粗末でした。
おそらくは米本土にあった弾薬は悉くウクライナ戦線に持っていかれ、日本での演習用には回せなかったのかも知れません。
それでも最終日にはなんとか間にあって、10月14日、日米合わせて120人が参加してハイマースの演習弾計12発を約13キロ離れた地上目標へ向けて発射しました。
面目はなんとか保たれました。
また、このご時勢ゆえに北方4島のロシア軍が北海道東海岸に上陸する可能性もなくはありませんので、矢臼別での演習はロシア軍に対する「北海道の守りは固いですよ!」というデモンストレーションの意味合いもあったのだと思われます。
無責任な人たちは「戦争のない日本に自衛隊なんか要らない…」などと言いますが、平時の訓練とその存在が戦争の抑止になっている事実を知るべきです。
とくに今日の軍隊は、戦うために存在しているというよりも外交の背景として存在しています。