先月の30日、防衛力の抜本的強化に関する政府の有識者会議が初めて開かれました。
GDP比2%にむけ防衛力を整備するにあたり、議論の焦点はもっぱら「財源問題」になっているようです。
実になさけないことです。
しかも、将来的に増税で返済する「つなぎ国債」の発行が検討されているらしい。
つなぎ国債とは、税金による償還を予め法律で定めておく国債のことです。
多くの人が誤解していますが、自国通貨建ての国債を税金で償還している国など世界にはなく、現実には借り換えの連続です。
それなのに我が国は、愚かなことに防衛費の増額分を税収(増税)で賄おうとしています。
現在、日本の防衛費はGDP比1%(約5兆円)ですが、これを令和5年から5年かけて段階的に引き上げ、令和9年度までに総額を約40兆円にもっていこうとしているわけですが、これをつなぎ国債(増税)で対応するとなると、消費税率をさらに2%引き上げるに匹敵する国民負担が必要になります。
消費税は税率1%あたり約2.5兆円の徴税額になるからです。
本当に馬鹿げたことです。
普通国債を発行すればいいだけなのに…
何度でも言いますが、普通国債の発行と償還は「借り換え」(ロールオーバー)の連続なので事実上、普通国債は返済する必要のない財源なのです。
おそらく「つなぎ国債」に拘っているのは財務省だと推察します。
普通国債の発行だと政府債務残高にカウントされ赤字国債扱いになるのですが、つなぎ国債だと赤字国債にならず政府債務残高にもカウントされません。
だから「つなぎ国債」で対応しようとしているのでしょう。
いわゆる収支均衡を絶対善とする「健全財政思想」です。
結局、正しい貨幣観をもたぬ人たちに議論させると、こうなってしまうのです。
貨幣とは何か?
それを正しく理解すると、以下の真実が明らかになります。
・行政の赤字は、新たな貨幣供給に過ぎない
・行政の赤字が、家計や企業の黒字をつくる
・おカネは使っても消えない
・財政支出の拡大が税収増をもたらす
・税収はGDPに相関する
・国債の発行量は民間預貯金に制約されない
・行政は歳出が先で歳入が後、家計はその逆
・重要なのは税収でなく、国民のモノやサービスをつくる力である
これらのことを真に理解すれば、有識者会議の「財源はつなぎ国債で…」という議論が、いかに愚かで馬鹿げたものであるのかがお解り頂けるでしょう。
くだらぬ財源論の前に、まずは北朝鮮のミサイル脅威にはどのように対応し、あるいは世界秩序維持(グローバル・コモンズ防衛)のための分担義務遂行に必要な防衛力とはいかなる防衛力なのか等々、ぜひとも防衛力の本質に関わる議論を進めてほしい。