2022年に北朝鮮が発射した弾道ミサイルは少なくとも33発で、最も多かった2019年の25発を上回って最多を更新しています。
北朝鮮は先月上旬に最高人民会議を開き、核兵器の使用条件などを定めた法令を採択しています。
「核を放棄せず、米国にでさえ先制使用も辞さないぞ!」と言わんばかりに。
今回のミサイルは、この法令が採択されて後、はじめて発射されたことになります。
もっとも、米国に対して先制攻撃をすれば壊滅的な報復攻撃にさらされることを金正恩主席は理解していますので、北朝鮮が米国をターゲットに核攻撃を仕掛けることはまず考え難い。
とはいえ彼の国が核能力を高めていることは事実のようで、だからこそ、より大胆になっています。
そんな北朝鮮が、核の力を背景に日本や韓国に対して通常兵器による攻撃、テロ攻撃、サイバー攻撃を仕掛けてくる可能性はゼロではありません。
そこで「そのために在日米軍がいるのではないか…」という意見がでてくるわけですが、多くの日本人が誤解しています。
在日米軍は日本(国民、国土、主権)を護るために駐留しているのでなく、日本(国民、国土、主権)を軍事的脅威から守るのはあくまでも自衛隊です。
在日米軍には、日本の自衛隊に先んじて日本を守る義務などないのでございます。
例えば『日米安全保障条約』の第五条には「(日米両国は)日本国の施政の下にある領域でのいずれか一方への武力攻撃が、自国の平和・安全を危うくすると認め、憲法上の規定、手続きに従って共通の危険に対処する」とありますが、これをもって米国が日本を守る義務を負っていると解釈するのは間違いです。
よく読めば解るとおり、日米両国として共通の危機に対処するのです。
そのとき、一義的に日本を守る主体はあくまでも自衛隊です。
米国は地域や世界の平和維持のために米軍を日本国内に駐留させており、その延長線上で自衛隊と協力して秩序破壊国に対処するだけです。
ゆえに在日米軍基地にある米軍の防衛力は、すべからく動的防衛力です。
つまり、普天間・佐世保・横田・八戸・横須賀等の米軍基地周辺そのものを護るための軍事力ではなく、あくまでも極東地域を含む世界の平和維持のために運用される防衛力で、これらの基地そのものよりも、これらの基地を拠点にして動的に運用される軍事力であることを私たち日本人は知るべきです。
その米国が主導する集団安保体制(世界の平和秩序維持)に自衛隊が積極的に参加することこそが、まさに我が国の積極的平和主義です。
28〜29日に北朝鮮から2発のミサイルが発射された翌日(30日)、日米韓の3カ国は日本海で北朝鮮対応を想定した共同訓練を行っていますが、これも核という脅威に対し集団安保体制の枠組みで対応していることの一環です。