私たちの現代生活に欠かせない存在となっている半導体。
ゆえに半導体は「産業のコメ」とも呼ばれています。
といっても、半導体自体は家電製品のように店舗販売されているわけではないので、生活者一般には分かりにくい存在かも知れません。
しかしながら実際には多くの電化製品、あるいは交通や通信などの社会インフラに半導体が利用されています。
例えば、エアコンの温度センサー、パソコンのCPUのほか、スマホ、デジタルカメラ、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、LED電球など様々なデジタル家電製品に使われ、また、銀行のATM、電車の運行、インターネット通信等々の社会インフラの中枢は半導体によって支えられています。
世は情報化社会。
その進展とともに今後も半導体の市場規模は継続的な成長が見込まれています。
ところが、半導体の生産は特定の企業や国に集中しています。
2020年時点において、最先端(回路幅10nm未満)の半導体生産は韓国のサムスンと台湾のTSMCの寡占状態となっており、米国が台湾を失うわけにいかないのも、そこにTSMCの最先端技術があるからです。
因みに、熊本県にTSMCの工場が誘致されますが、先端技術分野が来るわけではありません。
即ち、この半導体の最先端技術と供給網(サプライチェーン)を抑えることができるかできないかによって、経済安全保障をとりまく環境は大きく変わるわけです。
そうしたことから米国は今、半導体のサプライチェーンを安定化させる枠組をつくろうとしています。
近々、その準備会合を設置しようとしており、そこに招かれようとしているのは製造装置や材料技術で蓄積のある日本、最先端品の生産でリードする台湾、そして台湾に次ぐ生産能力をもつ韓国です。
新たな供給網連合の詳細は未だ決まっていないようですが、その枠組みから中国を排除しようとする米国の意思は明らかです。
むろん、我が国にとっても中国が入らないほうが大きな国益でしょう。
さて、そのなかで困っているのが韓国です。
韓国は、新たな供給網連合をつくろうとしている米国と、その枠組みから排除されようとしている中国との間で板挟み状態になっています。
むろん中国としては韓国の米国傾斜を強く牽制しています。
韓国は韓国で、半導体の輸出全体の6割を中国向けが占めていて、サムスン電子などは中国に半導体工場をもっています。
その一方、ご承知のとおり安全保障は米国に依存しているわけです。
要するに韓国は米中間の板挟みとなり、「踏み絵」を踏まされるような格好ですね。
韓国はお得意の事大主義により米中双方の顔色を伺う外交姿勢を徹底してきましたが、米中対立が先鋭化するにつれ、より切実な決断を迫られることになりそうです。
半導体をめぐる米国主導の新たな供給網連合に参加するのかどうか、ユン大統領の決断はいかに…