市場関係者たちの多くは「政府・日銀による為替介入は口先だけで、本気でやる気はないであろう…」と高を括っていたようですが、為替当局は意地をみせ、22日に24年ぶりとりなる介入(円買い・ドル売り介入)に踏み切りました。
ある方から「円買い介入する際の資金は税金ですか?」というお問い合わせを頂きましたので、本日は以下のとおりご説明申し上げます。
まず、結論から。
円買い(=ドル売り)介入の資金(原資)は税金ではなく、政府の外国為替資金特別会計、いわゆる外為特会に計上されている外貨準備です。
現在の我が国の外貨準備高は1兆2920億ドルで、日本円にすると優に180兆円を超えます。
これらは、過去に実施してきた介入によって買い入れた外貨(ドル)を積み上げたもので、20年前に比べて約3倍も増えました。
といって、すべてを現金や預金で保有しているわけではなく、主として米国債で保有しています。
一部は海外の中央銀行や国際決済銀行(BIS)などへの預金として保有しています。
上のグラフのとおり、金額にすると約19.5兆円となりますが、円買い・ドル売りの為替介入の際には、この預金でドルを購入しています。
因みに国際協調の観点から、米国債を売却して介入資金にすることはしません。
というか、米国様がお許しになられないかと。
一方、円売り(ドル買い)介入の際には、財務省が国庫短期証券(国債)を発行して金融市場から円を調達し、それでドルを買います。
買われたドルはまた外貨準備高として積み上げられます。
中国政府のように国債を発行せず、中央銀行が直に元(自国通貨)を発行してドルを買うなど介入に充てるケースもありますが、我が国はそういう対応をしていません。
その場合、発行した元(自国通貨)が市場に放置されたままになるからです。
日本のように国債を発行して介入に充てれば、それ即ち予め市場から円を調達しておくことになりますので、円の流通量は変わらないわけです。
過日、元財務官僚の榊原英資(さかきばら えいすけ)さんが現在の円安問題についてテレビ番組で解説されていました。
榊原さんは、かつて1998年に大規模な為替介入(円買い・ドル売り)を行った際の財務官であり、そのことから「ミスター円」の異名をお持ちの方です。
その榊原さんが実に興味深い発言をされていました。
「円買い・ドル売り介入は外貨準備が上限になるので大変なんです。その一方、円売り・ドル買い介入は楽なんです。なぜなら円は無限にありますから…」と。
そのとおり!
円の発行権を有する政府・日銀ですから、円は無限にあるのです。
無限にあるということは、日本政府が自国通貨建て(円建て)で発行した国債を償還できずデフォルト(債務不履行)に陥ることなどあり得ないのでございます。
即ち、榊原元財務官は、日本政府に財政破綻など存在しないことをご理解をされていたことになります。
在りもしない「財政破綻論」を主張する総本山である財務省であっても、その中には「ほんとは破綻などしない!」ことを理解している官僚が何人かはおられるのでしょう。