今年、戦後はじめて我が国の防衛が歴史的な転換点を迎えることになりそうです。
8月末、防衛省は来年度予算の概算要求で過去最大となる防衛費を計上しました。
今後5年以内にGDP比2%も視野に入ります。
因みに、GDP比1%枠という上限規定は1986年に撤廃されたものの、デフレ下でのプライマリーバランス黒字化という狂気の沙汰としか言いようのない緊縮財政が行われてきたことにより、我が国の防衛費がGDP比1%を超えたことはほとんどありません。
「防衛費を増やすと戦争リスクが高まるのでは…」と懸念する国民もおられますが、この20年のあいだ中国経済が成長し続け、それに伴い彼の国の軍事力が飛躍的に増強され続けてきたなか、我が国だけが防衛費を増やしてこなかった現実こそが東アジアの軍事バランスを著しく崩してしまい、むしろ戦争リスクを高めてしまった事実を知ってほしい。
頼みの米国の軍事力すら、いまやかつてのような覇権国としての力を有しているわけではありません。
台湾問題をめぐって強気の姿勢をみせているものの、軍事外交面で牽制球を投げているにすぎず本気で中国と事を構える気などないようです。
要するに、あてにならないのです。
さすがに我が国の防衛当局もそのことを理解しているようで、だからこそ防衛費を大幅に増やすかたちで歴史的な転換点を迎えているのだと思います。
これまで我が国の防衛戦略は、いわゆる「専守防衛」に徹してきました。
専守防衛と言っても、敵軍が上陸してくる場所、時期、手段、規模を決めるのはむろん相手側であって我が国ではありません。
敵軍が上陸してくる場所、時期、手段、規模を予測することが困難である以上、GDP比1%以内という悲劇的な財政制約のなかで防衛力を整備しなければならなかった我が国は、限られた兵力と装備でオールランドに対応できる体制をとってきました。
これを「基盤的防衛力」といいます。
いつの日か、我が国の防衛費が国際平均(GDP比2〜3%)にまで引き上げられたとき、その防衛力を拡張(エキスパンド)させることができる基盤だから基盤的防衛力といいます。
ご承知のとおり、第二次世界大戦後は「国家間決戦なき時代」となり、世界の秩序と平和は核兵器と超大国によって形づくられてきました。
とりわけ冷戦時代は「日米安保があるかぎりソ連の日本侵攻はない。しかしながら、小規模限定的な侵略はあり得るので、それに耐えうる戦力が必要である」と考えられていました。
やがて米国が頼りにならず日本が独力で戦う必要ができた場合にはその戦力を拡張させなければならず、そのための基盤となる防衛力は相手の出方に応じて如何様にも拡張(エキスパンド)できるオールラウンドなものでなければならなかったわけです。
戦後の自衛隊が限られた防衛予算のなかで培ってきた戦略(基盤的防衛力構想)はまちがっていなかったと思います。
戦後70年(サンフランシスコ講和条約の発効日を起点)にして、ようやく僅かならも防衛予算が増額される時代が到来したのです。
といって、病的なほどに「緊縮財政思想」「新自由主義」に洗脳された政治家、官僚、メディアらによる抵抗もあり、GDP比2%にまで到達するのは容易ではないでしょう。
すでに「防衛増税」などというあり得ない増税論まで取り沙汰されている始末です。
繰り返しますが、自国通貨建てでの国債発行が可能で、なおかつ変動相場制を維持できる日本国に「財政破綻」などありえません。
なんら恐るることなく「国債」を発行すればいい。
わざわざ「防衛国債」などと銘打つ必要もない。
防衛費が国際平均(GDP比2〜3%)に達しなければ、我が国は真の「独立国」とは言えません。