国では来年度(2023年度)予算案の編成作業が進んでいます。
各省庁が財務省に要求(概算要求)する総額は、110兆円規模になるらしい。
これをもって日本経済新聞は「歳出の膨張圧力が強まっている…」と、相変わらずの報道をしています。
要するに「このままでは財政がぁ〜」というお約束のテンプレ報道で、例によって「歳出を増やすなら具体的な財源(増税)論を示すべきだ」と言いたいわけです。
彼らの言う「財源論」とは、民間が保有する貨幣を政府が課税によって徴収し、それをもって財源とせよ、というものです。
一見、ごもっともそうな理屈です。
たしかに財源とは「貨幣」のことですが、であるのなら、どうしてわざわざ貨幣を民間から徴収せねばならないのでしょうか。
民間が保有する「円」は、いったいどこから来たと思っているのか…
ご承知のとおり、日本政府(日本銀行)は「円」を発行できます。
日本政府が自ら発行できる「円」をわざわざ民間から徴収しなければならない理屈がわからない。
政府自らが発行して財源に充てればいいだけの話です。
どうして彼ら彼女らはこんな簡単なことを理解できないのでしょうか。
むろん「貨幣とは何か」という根本的なことを理解していないからです。
いつも言うとおり、貨幣とは「負債」の一形式です。
例えば、民間銀行も貨幣を創造することができます。
つまり民間銀行は「貸し出し」を行うことによって、預金(負債)という貨幣(預金通貨)を生み出します。
これが「信用創造」ってやつですね。
多くの人たちが誤解されていますが、民間銀行は企業や家計から預金を集め、それを又貸ししているわけではありません。
実際には、企業や家計に貸し出しを行うことで、預金という通貨(預金通貨)を生み出しています。
そして、企業や家計が民間銀行に借りたおカネ(貨幣)を返済することで貨幣は消滅します。
つまり貨幣は、民間銀行の貸し出しによって「創造」され、民間銀行への返済によって「破壊」されるわけです。
銀行の貸し出しによって貨幣が創造されるのですが、そもそも借り手となる企業や家計に資金需要がなければなりません。
企業や家計に「おカネを借りたい…」という需要がなければ貨幣は創造されないのでございます。
我が国経済は今、コストプッシュインフレとデフレが同時進行しています。
前者は供給制約によるもの、後者は需要不足によるもの。
これを同時に解決するには、政府による大規模な貨幣創造が必要です。
膨張圧力、なお結構ではないか。